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2007/09/17 (Mon) かれらの近況報告

せつなさに泣いても、恋は繰り返すらしい。

今日、会社に顔を出したら、昨日中国から帰ってきたばかりの後輩がいた。

こいつは中国に釈由美子に似た彼女がいる。



日本人カラオケで働いていた彼女とは紆余曲折があったけれど、
最近は真剣に結婚を考えるほど仲良くやってるらしい。

結構なことだ。



ちなみに、憶えてる人もいるかもしれないが、こいつらの紆余曲折は前に小説風に紹介したことがある。

事実は小説より奇なりと言うが、
あのころのこいつらはドラマよりドラマティックだった(途中まで?
泳げない魚たち 参照)





で、今回、続編でも書こうかなと思い、後輩に彼女との近況を聞いたんだけど、なんかね、100パー幸せな話は、書く気が失せるねw



彼女は今、日本人カラオケのキャストをやめて、
企業に就職してちゃんとOLをしている。


彼女は最近では、結婚したら日本に来てもいいかな、と言っている。
ただし、彼女の親に家を買ってあげてから、ってのが条件らしい。
でもそれって2、3百万円くらいだから何とでもなるらしいw


彼女はバイブを持ち出すと激怒する。
後輩が仕事仲間からもらったバイブを、ウキウキ気分でベッドのすそからウィンウィン出してちょっと先っぽをあそこに当てたら、その瞬間、彼女がガバッと起き上がり、無言のまま脳震盪を起こすぐれーの100のパワーで後頭部をひっぱたかれたらしい。
彼女いわく、日本人はキチガイらしいw



今の上司に、中国に付き合ってる彼女がいるって話しましたよ。

Fineさんの下にいたころは、彼女とうまくいかなくて切なかったですけどね・・・などと遠い目をされる始末。




なんか、こんなしあわせ話ばっかじゃーねー

こっちもはなし書く闘志が湧きません。



一応、近況報告ってことでww

ま、うまくいってほしいとは思ってるんだけどね☆



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2007/01/24 (Wed) 泳げない魚たち:あれから4
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「だからさ。なんでそんなウワサが流れるのか全然わかんねえよ」

オレはリナと別れるつもりはない。

別れたくない。

ここで認めたらどうなるかわからない。

ドドンパ並みのロケットスタートでエンディングに向かう可能性だってある。

それにオレにだって言い分は、ある。

本当は

「どうでもいいじゃん!!!」

と言いたい。

だって十月といえば、オレらは別れていたんだから。




「本当?

あたし、直接、聞いてみたっていいんだけど。香花に」


シオリの本名はリーファっていうのか。今知った。

狭い業界。友達じゃないにしても顔見知りらしい。

見事に動揺した。

ああ。なみなみの風呂に入って、ふかふかのベッドで中島みゆきでも聴いて泣きたい気分だ。

「香花?!?! 知るかっボケ!!! 好きにすればいい!!!」

・・・なに言ってんだオレ。

火に油をそそいでどうする。

ヤバイ・・・

ますますヤバイ・・・・

なんだっけ?

どうするんだっけ?

脳みそが高速回転する。

スパークする。

爆発前の怪獣みたいに身体のあちこちから煙が立ちのぼりそうだ。

リナは、ふうん、と鼻をならしてから

「あっそ。じゃあ好きにさせてもらうわ」

と唇を硬く結んだ。

いちいちなにかを見透かされているようで腹が立つ。

「ちょ。ちょっと。

オレは何もしてないけど。

でも、もし、なにかあったとしてもオレは悪いとは思わない」


咄嗟に言ってしまってから、反省した。

やっぱ今のナシ。

これじゃ、なにかあった、と言ってるも同然だ。

缶ビールを一気に飲みほした。

むこうを向いて窓ガラスに煙草の煙を吐きかける。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

リナは悟りきったような目で無言だ。

嫌な沈黙だ。

意外と意地が悪い。

放置プレーだ。




「・・・・・・・・・・・元気ぃ?」

「私はぜんぜん元気じゃありません」

髪をかきあげて見下ろすように睨んでいる。



「・・・・・・・だってさ。

十月は別れていたときだろう?それって浮気じゃないよねえ」


突貫工事で墓穴をガンガン掘り進んでいる気分だ。

自分自身、呆れる。

「あたし、もしイズがそんなことしてたら・・・・好きだけど、別れるから」

意外なほど強い視線に胸が圧迫された。

「してねえって!

なんでよ?

もしそうだとしても何も悪くねえじゃん」


曖昧にぼかしておきたいというフラフラした人間の言い訳。

ささやかな抵抗。

そんな感じか。

「あのさ、イズ。

良い悪いじゃないの。

正しいか正しくないか、そんなのじゃないの。

そりゃ、学校の試験だったら、“別れていたら悪くない”が正解かもしれないわよ。

でもそういうのじゃない。

あたしは別れてすぐにそういうことをするっていうのが信じられないの。

別れてすぐそういうことができる人ってのが信じられない。

そういうのが嫌いなの。

そういう人が大っ嫌いっなの!!!!」


なにがなんだかわからないけど、うなずいてしまった。

オレは悪くない、と言いながら、やっぱり罪悪感がある裏返しだ。

そしてもう論点は「善悪」を通り越して

より本質的な「好き嫌い」にいってしまっている。

ああ。旅立つ不幸をお許しください・・・








やっと、リナに業界を抜けさせることができたのに。

先月、日本語学校を卒業したリナは、来週いっぱいで「リージェンシー」を辞める。

そしたらリナはいったん武漢に帰る。

田舎で旧正月を過ごし、二月に上海に戻って仕事を探す約束だ。

それから

「カネは出すからアパートで一人住まいをしてほしい」

とも伝えている。

リナは今、四人で住んでいる。

アパートに遊びに行ってもオレの居場所がない。

それにカネを出すといっても、どんなキレイな2DKでも中国じゃたかだか六千円くらいだ。

なんならしばらくリナが無職でもいいと思ってる。

月三万円渡せば、中国ならまあまあ優雅な生活ができるだろう。

そんなことを思っていたのに・・・






次の日は、リナが爆弾をかかえて電話してくると朝から身構えていた。

だけど電話してきたリナは、浮気には一切ふれなかった。

なぜか、あの電話以来

浮気には一切ふれていない・・・

そしてオレは、寝覚めが悪い日が続いている・・・・










はなしが今に追いついちゃいました。

リアルに今の彼らの状況がそれです。

「あっちも似たようなことしてるんですよ」

って、そいつは言ってましたがw

彼女は今、旧正月で武漢に帰っているらしいです。


ではでは。ぐないベイベ☆






2007/01/22 (Mon) 泳げない魚たち:あれから3
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昨日、やっとこさ新潟から帰ってきました

いや、まいった・・・

仕事でやっちまいましたが、気にすんな!オレ!

さ、久々にいってみよっ!!!

ひーーーーーーうぃごっっッッッ!!!!!








「ねえ。イズの部屋に行ったコがいるって聞いたんだけど・・・」

リナが言った。

「はい? なになに? 部屋って? は???」



オレは年末に日本に帰ってきていた。

リナとはヨリを戻して。

そして以前のように、オレが日本に帰ってきているときは週末になるとIP電話でたわいもない会話を何時間もしている。

今日はめずらしく平日に電話があったと思ったら、これだ。

パソコンの中のリナはオレを睨みつけている。

おお、こっわぁ・・・


「部屋って言ったら、あなたのホテルの部屋に決まってるじゃない」

上海に行ったときはホテル住まいをしている。その部屋のことか。

だけど、ついこのあいだの出張ではやましいことは何一つしていない。

「え? え? え? いつ?」

「いつって何が? 今日よ。今日、聞いたのよ」

唇の端に力がこもっている。

「いや。そうじゃなくて、いつのはなしってこと」

「うっわー。いつのはなし?

いつのはなしって、なによそれ。

それってやっぱり心当たりがあるってことじゃない」


なんだその理論は。舌打ちしそうになる。

「いや、そうじゃなくてさ」

「・・・そうじゃなくて何よ?

そのコのほかにもたくさんしたから?

いつのことか言ってくれないとどのコかわかんないってこと?」


最悪だ。

頭の中で大きく溜め息をついた。

リナのねちっこい不信感が、なんかめんどうくさくなってきた。

「してねーし!!!

だいたい誰から何を聞いたんだよ!!!」




日本人カラオケの業界は狭い。

リナもそうだが、キャストは田舎でスカウトされて上海に出てきているコが多い。

そして一緒にスカウトされた同郷のコと二、三人でアパート住まいしている。

オンナ三人で姦しい。

その上、日中はみんなヒマをもてあましているから、同居人のキャスト同士、店で仕入れてきたウワサ話に花が咲きまくっていることは間違いない。

「ミントキャンディ」のあのコは毎月二千元であの客に囲われてるんだって。

それならあっちのお客のほうが太いわよ。一晩で二千元くれるらしいわよ。

そうそう。そういえば、あの太い客は同じ「ミントキャンディ」のあのコが寝取ったらしいわよ。

えーー。だからアイスチェンジのときあのコの頭に氷をぶちまけたのね。

納得、納得。あはは。

そんなだからウワサが広まるのなんてあっという間に決まっている。



「麗華から聞いたの。店のコがそんなこと言ってたわよ、って」

麗華。

働いてる店は違うがリナと一緒に武漢から出てきてリナと同居しているキャストだ。

「で、だいたい誰だよ?

オレと寝たコって?

そりゃ、お前とつきあう前は何人かホテルに呼んだコもいたよ。

だからって今さらなんだよ?

そんなの今さら関係ねえじゃん!!」


それ以外にも心当たりはあるが、ここは勢いをつけて逆ギレしてみせる。

「そんな昔のことを言ってるんじゃない!!

十月のこと!!

エリアって店のキャストを部屋に呼んだでしょ!!!」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

オレは画面の中のリナを茫然と見返していた。

せっかくヨリが戻ったというのに、これは神様のいやがらせか?

目眩がした。

胃のあたりにあった湿ったシコリがぎゅっと重みを増した・・・





秋の出張のときにリナとうまくいかなくなって、少しずつ壊れていって、終るとわかっていながらピリオドが打てず、そこから逃げまわっていたときに・・・。

うん。いくらカッコイイことを言っても、要は、憂さ晴らしにそのコと寝ている。

「エリア」のシオリ。本名は知らない。

だけどよく覚えている。

リナと付き合うようになると、リナは「リージェンシー」で働いているところをオレに見られるのを嫌がった。

だからオレは先輩と「エリア」によく飲みに行っていた。

そこで知り合ったキャスト。

たいてい、どのキャストも素の顔を客の前では見せようとしない。

客の前では自分を殺して客好みの人形になりきってしまう。

天真爛漫なオンナ。

小悪魔なオンナ。

天然ボケなオンナ。

お嬢様なオンナ。

演じる。

たぶらかす。

そして興味もない客の話題なんかに話をあわせ、その上、夢中になってるフリなんかしたりして。

そして、盛り上がった客と一晩だけの疑似恋愛で、中国のOLの月給並みのカネを手にする。

日本円にすれば、たかだか一、二万円のこと。

キャストはホクホク、おっさんもニコニコ。

需要と供給。

カネと欲。

だけどシオリは違った。




シオリはとてもプライドが高いコだった。

リナが小悪魔的なオンナとすれば、シオリはお嬢様系のオンナだ。

どこか小林麻央に似ていたのでオレたちは勝手にマオちゃんと呼んでいた。

いつもシックでセクシーな背中がざっくりあいたワンピースを着ているが

気が強そうな健全な目に、媚びた微笑や、卑しい下心はない。

言葉も甘えるようなところがなくて、どっちかといえばハキハキしている。

下克上のオンナの世界はあまくない。

ほとんど素で接客するシオリは、おっさんのつまらない話題にはつまらなそうな顔をするし

お客が説教モードに入ろうものなら、屹然と反発する。

すきあらば身体に触ろうとする客には本気で手をひっぱたく。

ガードは鉄壁だ。

日本人カラオケには十人に一人くらいそういった潔癖なコがいたりする。

アフターなんか「とんでもない」と激怒するコ。

シオリは、ルックスはいいのに万事そんな具合だから特に人気があるわけじゃなかった。

だけどオレと先輩は妙にシオリが気に入った。

半分はそんなシオリを応援したい気持ち。

半分は日本人カラオケという虚の世界で偽りがないシオリが心地よかった。

そのプライドの高さも。



だからリナとうまくいかなくなった憂さ晴らしにシオリを誘ったときに

シオリがすんなりOKしてくれたことにオレは少なからず驚いた。


そしてシオリと寝た翌朝。

お金を渡そうとすると、シオリは「お金はいらない」と言った。

日本人カラオケ業界には暗黙の了解がある。

お金を受け取らないということは「あなたとお付き合いしたい」というキャストからの意思表示だ。

逆に、お金を受け取ったり催促したりするのは・・・まあ、ほとんどがそうなのだが・・・単にお金だけの関係、一晩の関係よ、ということだ。

オレはシオリにリナのことを話し

「今は誰とも付き合うつもりはない。だからあなたとは付き合えない」

と言った。

それなのに、シオリは晴れ晴れとにっこり笑って

「でもお金はいらない」

とお金を受け取らなかった。

よく晴れた冬の朝のような透明感のある笑顔だった。

「じゃあ、このプリンだけもらっていくね」

と言うと、昨日買った好物のプリンを手にして

シオリはひらひらと手を振って部屋を出て行った。

オレは手にカネを持ってバカみたいに突っ立っていた。




それにしても、あのシオリが、自分の口から周りにオレと寝たなんてことを言うわけがない。

絶対にない。

なぜそんなウワサ、ウワサというかその通りの間違ってない情報だが、リークしたのだろうか。

シオリがオレのホテルに入るところを知り合いに見られたのだろうか。

それとも同居人のキャスト二人がシオリに問い詰めたのだろうか。

多分そんなとこだろう。

めずらしくアパートに帰ってこなかったシオリに、二人がかりで興味津々と

「めずらしいわね。相手は誰なのよー」

と。




「なぁんだ。やっぱりそうなんだ。本当なんだ」

リナの怪訝そうな顔がパソコンの画面に映っていた。

「いやいや。してねえったら」

声がかすれてしまった。



TO BE こんてぃにゅ・・・






2007/01/16 (Tue) 泳げない魚たち:あれから2
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リナと話すのは楽しい。

不思議なほど気負いなく言葉のやり取りが楽しめる。

ただ茫然と立ち尽くしていた昨日までが嘘のようだ。

とにかく何もやる気がおきなくて

なにをやってもダメで

五感は麻痺状態で

見えるものは色彩がなかった。

今、気が付けばオレはそんな昨日から、もうずいぶんと離れた場所にいる。

それだけでオレの人生は大きな進歩だ。


「ありがとうね、イズ・・・」

リナは照れくさそうに、だけどしっかりオレを見つめて言った。

お礼を言いたいのはオレのほうかもしれない。

オレは照れくさそうに鼻を鳴らした。

「うん。まあ、てきとーに」

「うん。まあ、てきとーに、か。

その、てきとーに、がでかいのよ」









店がはねてから、オレたちは日本人向けの酒家に行った。

「干杯(カンペイ)!!!!」

ぷはぁと息をつく。

再会したオレたちは必死にはしゃいだ。

熱に浮かされたように。

楽しくなければ罪みたいに。






それからリナのアパートに行った。


その夜、オレは次の日の朝が早いにも関わらず

なかなか寝付かれずベッドの中で何度も寝返りを打っていた。

飲みすぎ。

あれから泥酔してアパートにいくと

シャワーも浴びないでいつの間にかベッドに寝ていた。

だけどなかなか眠りの尻尾をたぐり寄せることができない。

なんだかどうでもよくなってきた。

のどが渇いてキッチンまでエビアンを取りに行った。

部屋に戻るとベッドのはじでリナが窮屈そうに身体を丸くして眠っている。

近づいて見下ろした。

あどけない。

「よく寝てる」

小さくつぶやくと

「寝てないよ」

とリナが言ったのでびっくりした。

「あ。わりぃ。起こした?」

「うーうん。もともと寝てなかったから」

とリナがフフンと笑う。

「どうした?眠れない?」

「うーうん。そうじゃなくて、眠ってしまいたくないなって」

チラっとリナが眼を向けた。

「なんで?」

「なんでかな?久しぶりだから?」

リナは少しの間、黙った。



「しようか」

するすると言葉が出ていた。



「明日早いんでしょ?」

「うん。どうせ寝れそうもないし、寝ないで行くよ。

それに、オレはしたい」


「・・・・・ヘンタイ」

と日本語で言ってリナは枕に顔をうずめ、けたけた笑う。


「でも、あたしも、したいかな。

・・・・でも本当言うと、なぜかな? すごくドキドキしてる」


リナは照れくさそうに首をすくめてはにかんだ。

「心配すんな。オレのほうがもっとドキドキしてるから」

腕を伸ばしてリナを抱きすくめる。

リナの胸に顔を埋めると、日なたの匂いがした。

とても懐かしい匂いだった。








短かっ!!!

はい。明日早いんでこの辺で切り上げておきます

明日から新潟の妙高高原に出張です

じゃね、ぐない☆



2007/01/15 (Mon) 泳げない魚たち:あれから1
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「もう、終わりですよ、終わり。おしまい。」

「そうなの?」

「今やり直したって絶対うまくいかないですって。

もう、うちらの仲は何回も割れた皿といっしょなんです。

接着剤とかで何回も無理やり補修した皿なんです。

ちょっとつついたらまたすぐ粉々に砕けるんです。

分かってるんです。

それにこの前、メールが着たんですけど「これからも友達で」みたいな
彼女もそんなかんじですから。

もう次の出張のときには、彼女にそっちに行くことは連絡しないし、しばらく会わないつもりですよ」






・・・・・・・などと先輩には言っておいて

中国に来て二週間でオレの決意は砕け散っていた。




ごうっとホコリっぽい排気を巻きあげて、すぐ脇をトラックがおい抜いていく。

街の明かりと喧騒がモヤのように絡み合った上海の空は

深夜でもうすぼんやりと発光していて、星はまるでみえなかった。

今回の出張でオレは狩猟民族たちの狩場に放り出されたように右往左往していた。

遠い異国でいつもどこかでビクビクしていて劣等感ばかりが募る。

いいじゃないか、と思ってしまったのは、酔っていたせいか、仕事が上手くいかず気持ちが弱っていたせいなのか。

多分、その両方だろう。

行っちゃえ・・・・

頭の奥深くから声が返ってきて、酔いが回った後頭部のあたりがじわっと熱をおびた。

その熱に乗り遅れないように声にだして呟いてみた。

「・・・・・行っちゃおうかな」

言ってしまってから、ヤバイな、と思った。

もやもやしていたものが、急に現実味をおびるのを感じた。

意を決したように手に持ってる缶ビールをゴクゴクと飲んだ。

ますますヤバイ。

種火に油をそそいでいる。

今行かなかったら、明日になったら、今の熱が冷めるのは目に見えている。

よくあること。

人生なんてそんなもの。

思いついたとき動き出せなきゃ、物語は始まらない。

どうしようかな・・・

先輩に口では「もう終わりだ」などと言いながら卑屈な願いがどこかにある。

我慢してたらダメでしょ?

意固地になってどうする?

しばらく缶の飲み口を睨みつけていた。

最後の一滴をすすったとき、オレの決意は砕けていた。

なにかに乗り遅れちゃいけない、と思った。

缶を持つ手にすこし力がこもる。

「おーし、いいじゃん、やっぱ行こう」

急に本気で胸がドキドキしてきて

なぜかあわてたように煙草に火をつけると

オレは「リージェンシー」に向かって歩き出していた。







リージェンシーに着いてみると店は閉店間際だった。

この時間になると、店の中はごった返した酔客で酸素が薄くなり、淀んだ喧騒が充満している。

免疫はできているが、それでも今日は居心地が悪い。

手持ち無沙汰で煙草を吸おうとしたが、なかなかライターに火がつかず

酸素が薄いからかな、などとバカなことを考えていたときに

目の前にタイトミニの脚があった。

見上げると、リナは、一瞬、芝居がかった仕草で驚きをうかべ、そのあとオレの心中を見透かしたように眼をふせ、微笑んだ。

リナのふせた眼と唇の端に、実は内心けっこう嬉しいような、喜んでいるような微笑が浮かんでいて、オレはひそかに安堵した。

「よっ!久しぶり」

「うん」

となりに座ったリナに悪戯っぽく見つめられ、視線が頬にチリチリする。

なんだか急に無性に鏡で自分の顔を確認したい衝動にかられた。

勝手に気持ちが先走って浮かれていた。

オレは自分が思っているより遥かに単純なオトコらしい。

「来てくれたんだ」

「ああ。なんとなく」

リナは

「ありがとう」

と言って、あどけない表情で笑った。

香水の匂いと化粧の匂い、そしてリナの特有の体臭のようなものが、ほのかに香った。

会わなくなって二ヶ月しか経ってないのに、懐かしさに胸が苦しくなる。


「どうだった」

「どうってなにが?」

「だから会わなくなってからの話」

リナは口ごもって、グラスを見つめ小さく笑った。

「あたしは、あんまり変わってないよ」

「イズは?」


急にふられて答えに詰まったが、正直に答えた。

「オレはしばらく会わないつもりだったんだけどなあ・・・・」

言うとルナは

「ええー!」

とおどけて声を上げた。

「じゃあなに、いつからこっちに来てるの?」

「二週間前かな」

「ありえない!それって絶対ヘン!」

そんな風に指をつきつけられても困る。

「だってオレら、別れたわけだし・・・・」

「あれ?そうだっけ?だけど、せめてあれでしょ?

ほら、なんだっけ?」


「もとカレ」

「そうそうそうそう!せめてそれでしょ。

もとカレとして会ってくれたっていいじゃない」


「そのへんは、ひとそれぞれだろ。

オレはそこまでオトナじゃねえから」


「何言ってるの、イズ?

三十三歳は大人も大人。

イズはもう十分、大人でしょ」


いや、オトナって、年齢とかそういう意味じゃないんだけど。

うんうん、とリナは深くうなずいている。

オレはリナに攻撃されたことがヘンにうれしくて、あえて意地になってみた。

「やっぱり、もう来るのよそうかなあ・・・帰ろっかなあ・・・・」

「ええー!」

とリナがまた声を上げる。

「あ。でももう閉店の時間だから。これから食事に行くことに決定しまーす!!」


オレがキョトンとすると、リナは顔を覗き込みニヤリとした。

そうはいくか。

「えーー。もうメシ食ってきたんだよ」

とお腹をさする。うそだ。

リナは一瞬、落胆したように素直に苦笑したと思ったら

「じゃあさ、じゃあさ。あたしのアパート行く?麗華もいるよ」

と小声でささやいた。

願ってもない提案だ。だけどホイホイとは乗ってやらない。

「オレこれからホテル帰ってやらなきゃいけない仕事残ってるんだけど」

どうよ。と睨みつけてやる。

これにはリナも

「うーん、残念」

と考えこんだ。

オレは吹き出してしまった。



胸の奥のこそばゆいような甘酸っぱい心地よさ。

ここ最近、こんなふうに無邪気に楽しい感覚はずっと忘れていた。

何が理由でオレたちは別れたんだっけ?

何がひっかかっていたんだっけ?





外に出ると夜空は、雲が風に流され、頭上にぽっかりときれいな月がでていた。

「さてさて。これからどうしよっか?」

これから、というのは意味深だ。今日のこれから?

「なんかあったかいもの飲みたい」

オレたちのこれから?

「はは。やっぱり。そう言うと思ったよ」

笑いが弾けた。







そして

何もなかったかのように地球は回りだす。

何もなかったかのようにくすんでいた世界が輝きだす。


何もなかったかのように・・・・

だけどそれは幻想に過ぎない。






これはオリジナルではなく、中国に行っている後輩の実話です。

秋に書いていた「泳げない魚たち」の続編です。(カテゴリ参照

後輩は10月にまた中国に行き、年末に日本に帰ってきています。

ちゃっかりヨリを戻していますが、やっぱいろいろあるようで・・・

今回も中途半端な終り方すること必至ですがww



2006/10/20 (Fri) 泳げない魚たち10:最終章
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ひゃほーーー!最終章!!!

えとね、今さらだけど断っておく

これはオレが考えた話じゃないからね

後輩の実話ね、リアルね

だからドラマみたいな劇的なエンディングはねえよ

後輩もこれ中国で見てるからさ(二週間前にまたあっち行った

だから

そこんとこ期待しないで、ヨロシク♪



んじゃ

ひぃーーーーーうぃーーーーーゴっっっっ!!!!!!















「お前が浮気してたら死ぬからな!」

ドラマでも言わない馬鹿なセリフだった。

さすがに愛想を尽かされると思った。

だがリナは目を閉じて何度も頭を振っていた。



あれからリナとは一度も会っていない。



へんなプライドだけは残っていて自分からは連絡できなかった。

不細工で格好わるいプライド。

ちんけなプライド。

どん詰まりの崖っぷちでオレの時間は止まったままだ。



そして昨日、メールがきた。

「明日の夜、ホテルに行くから会ってほしい」

と。

リナはオレが日本に帰る日を覚えていてくれた。

びっくりした。

うれしかったけど

うれしさよりも、罪悪感のほうが大きかった。


オレはあれから、何度もホテルにオンナを連れ込んだ。

リナには、浮気するな、とさんざん言っていたオレが。

憂さ晴らし。

そんな自分を憎み、同時にそこからずっと逃げつづけてきた。

逃げつづけてきたけれど

オレの時間は、あの日から一歩も前に進んでいなかった。

自分から逃げ切れるわけなんか、ない。

二十八歳。

いつまでも感傷に浸っていられるほど暇じゃないし、年寄りでもない。

立ち止まっていれば、感傷は美化されて居心地のいいマユになる。

そこで膝を抱えてうずくまっている自分の気持ち悪さに気づけなくなったら、おしまいだ。

そんなことはわかっている。



人は一人で生きている。

でも、一人では生きられない。

いつも一人で歩いている。

でも、一人で歩きつづけるのは、淋しい。

だから誰かに一緒に歩いてほしい。

だけどそれは一人でちゃんと闘っているヤツの権利だ。

逃げ回っているオレにその資格は、ない。



オレはオンナを抱くたびに

オレはなんでここにいて、なにをやっているんだろうと思った。

違うオンナを抱きながら、目を閉じてリナを思い出していた。

そのときは悲しくて切実だったけれど、やっぱり気持ちの悪い行為だと思う。



自己嫌悪に落ちた。

オレの時間は動き出すのだろうか。








コンコンと部屋のドアがノックされた。

緊張してドアを開けた。

久しぶりに会ったリナは少し痩せたように見えた。

それでも、いつにも増して可憐な感じがした。

オレが買ってあげたオレンジのミニのワンピースを着ている。

「よっ!ひさしぶり」

リナが照れながらも、えらそうに日本語で言った。

「うん、ひさしぶり」

オレは目があわせられない。

「明日、帰っちゃうんだよね?」

「ああ」

「やっぱそうだった。

だと思って来たんだからさ。

違ってたら間抜けだもんね」


明るいリナの声。

淋しさが滲んでいる気がしたのはオレの勝手な幻想だろうか。

テレビをつけた。

シンとした部屋では声の輪郭がはっきりしすぎて、つらかった。

「もうメシ食った?」

いつものようにぶっきらぼうに聴いた。

「ううん、まだだけど」

「じゃあさ、どっか、メシでも食いに行く?」

行き先はどこでもよかった。

・・・また逃げている。

先延ばしにしようとしている。

「ううん・・・・今日はサヨナラを言いにきただけだから。

それにこれからお店なの」


リナがオレの心中を見透かしたように微笑した。

「あ、そっかそっか、そうだよね」

ひょっとしたらリナとやり直せるのではないか、という虫のいい期待があった。

だからサヨナラという言葉に胸の奥がズキンと痛んだ。

見る気もないテレビのほうに視線を向けた。

小泉首相が参拝しただの、どうしたのと中国語でニュースが流れている。

視界から締め出した。

「うん。サヨナラだ」

言葉にすると急に現実味をおびるのを感じた。

「ま、しょうがないっか」

ホントにいいのか?

だってしょうがないじゃん、そう言い聞かせる。




「しょうがなくなんかない・・・」

リナが呟いた。

「え?」

オレはねこじゃらしを目の前で振られた猫みたいに反射的にリナを見る。

自分でしょうがないと言いながらも気づいてほしいという卑屈な願いがどこかにある。

でも本当にしょうがないんだとも思っていた。

「ううん。なんでもない」

「なんだよ」

「・・・あなたと本気で結婚したいと思っていた」

「なんだよそれ?オレだってそうさ」

「でもあなたは決断してくれなかった」

「お前が日本にくる気があればすぐにでもそうしたよ?

でもお前は日本にくる気なんかないって言うから。

それに働く会社を紹介するから店を辞めてほしいって言っても全然辞めないし。

そうだろ」


「弟がいるから日本には行けないって言ったじゃない。

それにお店だって、好きであんな店で働いていたわけじゃない。

酔っ払いにベタベタ身体を触られて、それでもニコニコしている気持ちがわかる?

だからあなたにはそんなところ見せたくなくて。

だからお店には来てほしくないって言っていたの」



「そんなにイヤならさっさと辞めればよかったんだ。なんだよそれ」

「そんなのあなたみたいにお気楽に生きられる人に話してもわからない。

あなたはあたしをどこか馬鹿にしている。

中国人を蔑んでいる。

だからはなしてもどうせ心の中でせせら笑うだけじゃない。

そんなにイヤなら辞めればいい、とか、好きなように生きればいいとか、あなたが言いそうなことなんて全部予想がつく。

だから話したって無駄なの!」


リナには母親がいない。

死んでしまった。

そして残った親父はどうしようもないダメ親父らしい。

故郷の武漢には弟が二人いる。



確かにどこかにオレは中国人に対してお前らとは違うという傲慢な気持ちがある。

つまらないプライドで勝手に周りを見下して壁を作っているつまらない人間だ。

窓から車のテールランプが見えた。

置き去りにされる気分を感じる。

そうやって世界はどんどんオレを置き去りにしていく。

意識が水の中に沈み込んでいく。

テールランプが瞳を突きぬけて脳裏でゆらめく。

熱帯魚のようだ。

ひんやりした寂しさがこみあげてくる。

オレは小さな微笑でそれを押し込める。

「また喧嘩だ」

「ごめんなさい・・・」

リナはいつものように目を伏せて胸元に隠れているリングを押さえた。

おれたちは本当に愛し合っていた。

それは間違いない。




リナの足は外反母趾気味で痛々しい。

キャストの職業病みたいなもんだ。

この一年で明らかに骨までが変形し、皮膚がケロイド状にただれてかなりひどい。

リナのアパートでその足を見たとき胸が詰まった。

その痛々しく変形した指はリナの生き方を象徴していた。

それまではキャストなんて綺麗なだけでラクしてる怠け者だと思ってきた。

今は違う。

リナの言いたいことはよくわかっているつもりだ。

でも、だからこそ辞めてほしいと願っていた。



「あ、そうそう、お金返すね」

「え?・・・お金?」

「そう、あたしがあなたから今まで貰ったお金。

六万元でいいよね。

今はこれしかないけど、働いてちょっとづつ、きっと返すから」


そう言うとリナはバッグから輪ゴムで止められたお金を出した。

きっと一万元もないだろう。

だけどこれがきっと今のリナの全財産だ。

リナは今までオレがあげた携帯代やら何から何までを返すつもりなのか。

六万元は九十万円だ。

リナは一年間「リージェンシー」でタダ働きするつもりか。

オレは絶句した。

そんなことをいう中国人はいない。

カネに貪欲な中国人、それはリナも同じだと思っていた。

中国人にとって途方もないお金を返すと言うその決意に言葉を失った。


はっきりしているのは、

オレはリナの気持ちの重みに決定的に負けている、ということだ。

オレには、ここに一緒にいる資格すらない。



「お金はいい・・・いらない・・・」

オレは小さく呟いた。

切実さで決定的に負けている。

リナはこんなに必死に切実に生きている。

オレは、いつものらりくらりと周りの顔色をうかがって、不平ばかり溜め込みながら生きてきた。

オレは、リナには浮気をするな、と言いながら喧嘩をすれば違うオンナを抱いていた。

目に前にいるリナとの距離がひたすら遠い。

オレは二十八歳にして空っぽだ・・・・








それから「サヨナラ」と言ってオレたちは別れた。

お金なんか受け取れるはずがない。

罪悪感と自己嫌悪がどんどん重みを増していった。

大声を上げて泣きたくなった。









日本に帰ってきてからも考える。

リナはどんなに問い詰めようと、中野さんとは何もない、と言い続けた。

いつも真摯な態度で、信じて、と言い続けた。

本当に何もなかったんじゃないだろうか。

本当にただのお客さんだったんじゃないだろうか。

あのころオレは絶対浮気していると思い込んでいたが

今では、よくわからない。




ただ中野さんの電話は今でも恨めしく思う。

あのたった一本の電話からオレたちはこうなってしまったのだから。

あの電話さえなかったら、と思ってしまう。

結局、中野さんとは、あの電話で一度声を聞いただけだ。






日本に帰ってきたら会社のみんなから、痩せたねえ、と言われた。

それはそうだろう、ほとんど眠れない日が続いていたのだから。




日本に帰ってきて初めての休日だ。

久しぶりに街に出てスロットをした。

嘘みたいに出まくった。

笑ってしまった。

八千分の一の確立のアタリをレンチャンで引いたのだ。

こんなことは初めてだった。

ヤバイなあ、死んじゃうのかなあ、と漠然と思った。




だからそのカネでみんなと飲みに行った。

さんざん酔っ払って騒ぎまくった。

三軒目でカラオケを歌いまくった。

お開きになって、店を出たあと路上でも歌っていた。

笑いまくった。

今日はメチャクチャ笑った。

死ぬほど楽しかった。


























それでも


風は光らない。


風景は動かない。


オレの時間はあの日から止まったままだ。















Fin・・・・・・・



























てことで

これが今の時点でのリアルなエンディングです


でもね

日本に帰ってきてから、彼女からメールが一通きたっていってましたよ

内容は・・・・うーーん、秘密です

だって

彼のこのはなしはまだ途中なのかもしれないからね



すでに今ごろ中国では

止まったままだったカレの時間がまた動き出しているかもしれません

またヨリ戻した♪って帰ってきたり

全然、ありえる



そのときはまた「泳げない魚たち」復活か???


てことで、最初は三、四回で終わるつもりが

長々となってしょまいましたが

今までここまで読んでくれた方、ホントさんきう!!!!!!

心から、あらヴゅ☆









2006/10/18 (Wed) 泳げない魚たち9:収束
またまた、いいかんじで酔ってます。

ってか、かなり酔ってます。

学習しろや!と自分に言いたくなる今日このごろ

皆さんいかがお過ごしでしょうか?

マエオキはデリートの線で

いってみよっ!!!うりゃあ!!!!








「別れようか」






別れようか・・・

上海に着いた日もそう言った。

あの夜、オレは日本から用意してきた四万元をリナに渡して言った。

「そのカネで「リージェンシー」のオーナーママになるんだったらそれもいいだろう。

その世界で生きていく覚悟があるのならそうすればいい。

でもオレはお前と別れる」


と。

するとリナはうろたえて泣いた。

「ごめんなさい。

許してください。

別れるなんて言わないでほしい」


しゃくりながら中国語と日本語で謝った。

今思えば、オレはただそれを言わせたかっただけだ。

狼狽するリナを見て安心したかっただけだ。

「別れ」を口にしてリナを試した。

日本に帰っている間に幻想でむくむく大きくなった嫉妬心がそうさせた。






「・・・あたしのこと、もう信用できない?」

「そうじゃない」


疑い続けるのも、信用し続けるのも、もう面倒くさくなっただけ。

これからずっとリナを信用し続けることができればどんなにいいかと思う。

どんなに楽かと思う。

でもそう思い続けられるほどオレは鈍感じゃないし、バカじゃない。



「中野さん、怪我したんだよ。

ぱっくりと肉が裂けるのが見えたのよ。

それが真っ赤な血で被われて。

腕から滴る血が床をどんどん黒くして。

それなのにお店の人は中野さんを邪険におもてに放り出して。

だから・・・」



「そんなの、わかってる!」


オレは手にした煙草を叩きつけて大声を出していた。


「だけど、面白くねんだよ。

オレは中野のおっさんなんてどうでもいい。

よその客なんかどうでもいいんだよ。

どうなったってかまいやしない。

おっさんだって酔って暴れれば怪我することがあるかもしれないって、わかってんだろ。

怪我のひとつやふたつ自業自得だろ。

だからお前が心配してやることなんかないんだ。

わかるか?

ただの客にいちいち気安く関わったりするな。

オレに疑われるようなことするな。

オレに嘘をつくな!」



プライドという壁でせき止められていた嫉妬心が鬱屈とともに溢れ出した。

これが本音だ。

周りがどうなろうと知ったことじゃない。

ただオレだけを見てほしい。


それきりリナが口をつぐんでしまったので、それ以上、大きな喧嘩にはならなかった。




それからは、会うたびに最悪の展開になった。

オレは中野のおっさんのことが気になってしょうがなくて、会うたびに根掘り葉掘り聴いた。

リナはうんざりしているだろうに、そのたびにあのときと同じ恐いくらい真面目な顔で

「中野さんとは何もない。ただのお客さんだから」

と繰り返した。

そして最後にはいつも「別れ話」になった。

リナが「ごめんなさい」と浮気を認めてくれたほうがどんなに楽だったか。

それはリナも分かっていたはずだ。

でもリナは、そうはしなかった。




「みんな、一度「別れ」を口にすると、次からは簡単に「別れ」という言葉が口をつくようにナリマス」


リナが日本語で声を震わせて言ったことがあった。

なぜ日本語で言ったのかは分からない。

でもその感覚は中国人も一緒なんだ、と妙に納得した。

確かに、一度「別れ」を口にした恋人同士は、何かあって喧嘩するとすぐに「別れ」を口にするようになる。

きっとアメリカ人もインド人もフランス人も、人間はみんな同じ感覚なんだろうな、と思った。




リナに聴かれたことがある。


「どうして?、どうして中野さんがあの夜、怪我をしたって知っていたの?

どうして中野さんと谷口さんが同じ会社の同僚だって分かったの?

どうして?」



オレは白を切れなくなって、谷口のおっさんのブログのことを話した。

その話はレイカにも伝わり、おっさんのブログは閉鎖してしまった。

レイカとおっさんの二人で撮った写真がブログにたくさんアップされていたことにレイカが激怒したのだ。

ブログの最後の記事には、「レイカの知り合いさん、よくこのブログを見つけることができましたね、御見それしました」と書いてあった。

悪いことをしたなと思う。




もう長いことリナに会っていない。




「お前が浮気してたら死ぬからな!」

最後に会ったときに言った言葉だ。

自分でも笑ってしまう。

脅しにもなっていない。

相当テンパッてたんだなと思う。

でもそれからリナはオレに連絡を取らなくなった。

やっぱりリナは浮気してたんだろうかと思った。




それからオレは機械のように働いた。

機械に成り下がってしまったオレの心臓は、いつもギリギリと、ぜいぜいと、オレを生かしておくためだけに動くただの歯車になってしまった。

停めてもいいですか?

もう動かなくていいですか?

いつもそんなふうに問いかけながら不承不承動いていた。

夜、ベッドでうつぶせになると、そんな心臓の不満そうな軋みが聞こえオレを促した。

もう停めてしまいましょうよ、あっさりと。

生きているのが面倒くさかった。

だけど死ぬのはもっと面倒くさかった。

何もかもが急につまらなくなった。





だからオレは日本人カラオケに行っては毎晩のようにホテルにオンナを連れ込んだ。

妻以外とホテルに泊まるのは中国では犯罪だ。

捕まるとパスポートに「恥」とスタンプで押され一生中国には入国できなくなる。

でももうそんなことはどうでもいいと思っていた。



昨日、久しぶりにリナからメールがきた。

明日、夜、ホテルに会いに来ると。

びっくりした。

あさってはオレが日本に帰る日だった。




突然、リナと会ったころのことを思い出した。

オレがまだ中国語をよく喋れないころ。

リナのアパートに泊まった朝。

そのころ覚えた中国語が「洗濯」「下着」「~だけ」「手伝う」だった。

それをつなげて言ったら

「下着だけ洗ってあげる」

になった。

リナが日本語で言った。

「あなたヘンタイ」

二人で笑い転げた。

あのとき世界が輝き始めた。




泣きたくなった。











TO BE CONTINUE・・・・・・





次回は本当に最終回です






2006/10/17 (Tue) 泳げない魚たち8:予感
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酔ってまーーーーす!!!!!



でさ、言っとくけどさ

最終回じゃねえのよ、これ。

なにもったいつけてんの、って?

まあまあまあまあ

どうどうどうどう


8回ってさ、きり悪いじゃん???

そんなことない?



そんなこんなで、今日は短め

ひうぃご!!!!












血で黒く固まった包帯をリナの顔に投げつけた。

包帯に包まれていたコンドームが空中で抜け出し、リナの肩に当たって床に落ちた。

顔に命中して落ちた黒い包帯はコロコロと転がって、コンドームと床の上で並んだ。

間抜けだ。

中野のおっさんの血と精液。

どんどんパズルが組みあがっていく。

激しく力が抜けた。

涙が出るのを通り越してオレは陽気にすらなった。


「中野のおっさん、あの日

酔ってオレに電話してきた日、ここに来たよな?」



「・・・・・・違う」


「違わない。

おっさん、あの日、酔ってオレに電話してきたあとに暴れて店をつまみ出された。

暴れたときに割れたグラスかなんかで腕を怪我して、それをお前が介抱した。

そしてそのまま二人でここに来て朝まで一緒だったんだろ。

だから次の日オレがおっさんに電話していろいろ聞いたぞ、ってカマかけても、それは絶対嘘だって言い切れたんじゃないのか。

そうなんだろ」



「・・・違う。・・・そんなんじゃない」


「じゃ、どんなんだよ」


「確かにあなたの言う通り、あの日は店の前で中野さんの傷の手当をしてここに来たわ。

朝まで一緒にいた。

でもね、へんなことは一切してない。

いくら言い寄られても中野さんとしたことは今まで一度だってない」


「じゃあこれってなんだよ」

コンドームに視線を向けて顎をしゃくる。

「レイカがゴミを片付けるときに・・・多分、そう。

レイカが谷口さんと会ったときに、ゴミ箱に入っていた包帯でこれを包んだんだと」


リナの言葉を遮る。

「もうお前らを信用できるか!

レイカもお前もこの前オレを騙しただろうが!

だいたいここまで証拠が揃ってるのに、なにもしてないなんて、よくそんなことが言えるよな、信じらんねえよ!

舐めるのもいい加減にしろ!」



もううんざりだ。

風景がどんどん薄っぺらになって、つるつるになっていく。



思い出したのは世界がネガフィルムのように反転したあの日だ。

なんでイジメられたのかは今になってもよくわからない。

ゲームのように誰かが言い出して、たまたまオレがターゲットになったのだろう。

子供の世界なんてオトナが考えるよりはるかに単純で、だからこそ、その単純な無邪気さが残酷だ。

その日から突然、みんなが口をきいてくれなくなり、靴を捨てられたり、机にいたずら書きをされたり、ゲタ箱にゴミを入れられたりしはじめた。

給食の時間もグループごとに机をよせてはいたけれど、誰も話してくれなかった。

やがて朝になると腹が痛くなり、下痢ばかりおこすようになった。

毎日、学校を燃やすこと、地球をぶっ壊すこと、そればかりを考えていた。

今もあのときと同じだ。

怒りの波が押し寄せてきて身体の輪郭が曖昧になる。

この星をぶっ壊したいという怒りが脳髄を突き抜ける。




「あたしはあなたに信じてもらえないとしても・・・

信じてと、

なにもないからと、

本当だからと、

言うことしかできない。

ほかには何もできない。

だけど・・・お願い、あたしを信じてほしい」



こわいほど真剣な目。

涙が溢れて、頬をつたう。

でもやっぱりどこか嘘をついているように見える。

こめかみのあたりがチリチリした。

気に入らない、と思った。

リナはオレの喉をかき切っておいて、傷は浅いから信じて、と言う。

オレの息を停めておいて、なにもないから一緒に歩こう、と言う。

終ってることを終らせない。

その理不尽さはつらすぎる。



リナを睨みつける。

頬をつたう涙はテラテラと光っている。

光る涙に風景が写りこむ。

写りこんだ風景が一滴の水の中で泳ぐ魚のようにも見える。

オレはずっと我慢してた。

もう一ミクロンも我慢できない。

もう歩けない。

もう走れない。

もう泳げない。



明日、明日、明日。

明日のことをいつも考えて、結局どこへも行けない。

オレたちは気がつけば同じ場所でコマネズミのように滑車を回してるだけだ。

子供のころは人生は永遠に続いていくと思っていた。

自分の可能性に限界があるなんて思っていなかった。

だから目の前のことに後先かまわず没頭できた。

でも今は明日のことや三日後のことや来週の予定をすぐ考える。

そして最近は五年後のことや十年後のことまで頭にちらつく。

このまま中国で働いていて病気になったらどうするのか。

やっぱりリナと結婚して中国で暮らしたほうが幸せなのか。

そのためにはどれくらい貯金が必要なのか。

保険は入っておくべきか。

そんなことばかりを考えていた。

それももうおしまいだ。

よくあること。

みんなこうやって些細な落胆を積み重ねてつまんないオトナになっていくのか。



自分の夢が叶うとは思えない。

だから人の夢も笑う。

そんなオトナにはなりたくないと思って生きてきた。

でも結局は同じ場所に落ち着こうとしているんじゃないか。

オレは本当はどこへ行きたかったんだろう。



急に、尖っていた意識のひだをオブラートでくるまれたみたいにいろんなことが億劫になった。

急に気分が萎えた。

リナの中でオレが一番大きいのはオレだって分かってる。

だけどオレが全てではないのかもしれないという不安がいつもある。

リナの中でオレが一番大きいだけでは満足できない。

オレがリナの全てでなければ納得がいかない。

不安。

嫉妬。

それだけオレはリナのことが好きだということかもしれない。








「別れようか」















つうびーConちぬう・・・・








はい、今日はここまで♪

文章グデグデ?

酔っ払いなんで許せ

んじゃもう寝るわ

ぐない☆




2006/10/14 (Sat) 泳げない魚たち7:嘘
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今日、新潟から帰ってきました。

妙高に行ってたんですが山の上は雪が積もってましたよ。

さ、久々に

うりゃあぁぁああ・・・・ あああぁ・・・いったれや!!!







リナのマンションからレイカのいるアパートまで歩く。

生暖かい夏の空気がわずらわしい。

今夜もスモッグで星はまばらだ。

リナは通り過ぎる車に向かって日本語で「ばーか、ばーか」と言っている。

「アメリカの映画とかで、こういうのあったよね」

「ロードムービー?」

「そういうんじゃなくって

なんかバイクとかで荷物積んで走ってる感じのヤツ」


だから、それがロードムービーだろ。

「あたし、ああいうのけっこう憧れていたんだよね」

「へえ、けっこうロマンチストなんだ」

時間は午前二時を過ぎていた。

もちろん遅いからといって引き返す気はさらさらなかった。

明日にしようなどとは夢にも思わない。

リナは何かを隠している。

嘘をついている。

とにかく今は、レイカにマンションのことを聴いて確かめなければ気が済まなかった。

とにかく今夜は。





人は自分が本当に望んでいることを知らない。

自分の本当の望みを、本当の心の声を聴くのが一番難しい。

それは自分が自覚している望みの正反対のことだったりもする。

おれは何を望んでいるのだろう。

リナが浮気していることを望んでいるわけがない。

いや、本当のオレは、詮索し続けるのが面倒くさくて、あれこれ考え続けるのが辛くて、いっそ終らせようとしているのか。

「リナ」

「なに?」

言いたいことがある気がしたが、なにを言えばいいのかわからなくなった。

アパートの階段をあがる。

「ねえ、もうこんな時間なんだね。泊まっていく?」

リナはこれから嘘が暴かれるかもしれないのに何故かとても自然だ。

「うん・・・どうしようかな。明日も朝早いんだ」

「そうなんだ」

「それより腹へったよ」

リナが鍵を開ける。

「ねえ、何か食うもんない?」

オレはアパートに入るなりキッチンに入っていった。

「好きに探して何でも食べれば」

リナはソファーに倒れこんだ。

オレが冷蔵庫を物色しているとレイカが部屋からゴソゴソと出てきた。

「こんばんは、イズさん。愛玲、あたしも、おなかすいちゃったわ」

リナとレイカは武漢の幼馴染だ。

だから当然のこと名前で呼びあう。

リナの本名は李愛玲、リーアイリン。

レイカは柳麗華、ユーレイファ、だ。

以前は、リナの本名を知っているのはオレだけだと他の客に対して優越感があったりもした。

今となってはそれもどうだか怪しい。

中野のおっさんも知っているのだろうか。

オレは冷蔵庫やら棚の扉を片っ端から開ける。

戸棚の中にカップ麺と食パンを見つけた。

いつの間にか隣にきていたレイカが、見つかっちゃった、とかなんとか楽しそうに騒いでいる。

二人でお湯を沸かす。

トースターにセットする。

レイカと一緒にケタケタ笑う。

レイカは華奢で、笑うと小西真奈美によく似ている。

リナはぼんやりと顔だけこっちに向けている。

「愛玲、コーヒー飲む?」

「うん」

「じゃあ、入れてあげる」

リナはようやくソファーから起き上がった。

テーブルを三人で囲んで、顔を合わせた。

レイカはカップ麺を食べながら満足そうだ。

「今日、晩ごはん、まともなもの食ってなかったのよ」

「こんな時間に食べると太るわよ」

「おっと」

おどけながらレイカはオレたちに顔を向けた。

「それで何してたのよ、こんなに遅く」

待てば海路のなんたらだ。

たいして待ってもないけど。

どう切り出そうかと考えていたところ

図らずもレイカから切り出してくれた。



オレはドキドキしながらも茶化すように聴く。

「うん、さっき、あっちのマンションに行った。

すごいねあの派手なマンション。

知ってる?」


「ああ、ふーん、そうなんだ」

そんだけ?

思わず、コーヒーが気管に入りむせそうになった。

椅子の上で体育座りしているリナがオレを見ている。

オレはきっとビックリしたウサギみたいな顔をしているに違いない。

あまりにレイカがあっさり認めたのが予想外だった。

オレはいつも最悪のことを想定しているタイプの人間だから。


「え?知ってる?」

「そりゃもちろん、知ってるわよ」

レイカは何食わぬ様子でテーブルに肘をついて煙草に火をつけた。

マンションにあった吸殻と同じ銘柄の煙草だ。

「行ったことあるの?」

「当たり前じゃない。何度も行ってるわよ。ていうか・・・」

「ていうか?」

「ああ、うん、まあ、そういうこと。

おとといもあっちに行ったもの」


「へえ・・・そうなんだ・・・」

レイカの吸っている煙草を見つめる。

マンションの吸殻のことは、もう聴く気がうせた。

あれはきっと本当にレイカの吸殻なんだろう。


でもなにかが釈然としない。

二人で口裏を合わせている可能性だってある。

だが少なくとも、マンションからここに向かう間に、リナはレイカに連絡を取っていない。

ずっとオレが一緒だったからそれは不可能だ。

だとしたら、いつかこうなることを予測して二人で口裏を合わせていたということはないだろうか。

いやいや、そこまでやらないだろ。

疑い始めたらきりがない。

それとも本当に本当になんともないのか。

オレの取り越し苦労で、単にリナがマンションに引っ越しただけのことなのか。



レイカが噴き出した。

「なに、どうしたの?なんかあったの」

「・・・いや、べつになんにも」

リナが非難の目をオレに向ける。

「麗華、イズったら疑っているのよ。

中野さんのこと。

浮気しているんじゃないかって。ひどくない?」


レイカが思わず声を高めた。

「中野さん!?

プレゼント攻撃のあの中野さん?

どん臭そうなあの中野さん?

お金以外なんの取り柄もなさそうなあのスケベおやじの中野さん?」


「そうなのよ」

中野さんたら、ひどい言われようだ。

そうか、中野さんはお金以外なんの取り柄もないスケベおやじのコンコンチキなのか。

でっぷりと脂ぎったハゲおやじが頭に浮かんだ。

勝手な妄想。


「あれ?でも愛玲、中野さんとアフターしたことあるんだよね?」

「一度だけね。でも食事だけ、本当よ。

たくさんプレゼントも貰ったからね、営業活動よ。

でもそれだけ」


「イヤイヤ?」

「うーん、イヤイヤっていうか、あたしを気に入ってくれてるのは嬉しいけど、でも中野さんはただのお客さんだし・・・ありえないわ。

イズは何度そう言っても信じないみたいけど・・・」


ぐるりと首を回しうんざり顔でリナがオレを見る。

ありえないのか。

全てオレの幻想が生んだ取り越し苦労か。

でもやっぱり釈然としない。

鵜呑みにするな、と頭の片隅で叫ぶヤツがいる。

あの日の中野のおっさんの言葉、釈ちゃんはオレの女だ。

ただのお客が、携帯をパクった上、リダイヤルまでして「釈ちゃんはオレの女だ」とは言わない・・・と思う。

さもオレのほうが浮気相手だと決め付けていた怒り。嫉妬心。

あの熱は、なんでもないお客が持つエネルギーではない。


「じゃあ、なんで新しいマンションを隠してたのよ?」

そうだ、それならなんで隠す必要があるのか。

二人はにんまり微笑んで

「ナイショ」「ナイショ」

と声を合わせて椅子を立つ。

この話はここまでよ、という空気が流れる。

以前ならここで、適当に分かったふりをして大人ぶっていたかもしれない。

はっきりと追求できない自分の弱さを、これがやさしさだと誤解していたかもしれない。

だが今は「ナイショ」などといわれてスルーなんかできない。

「ナイショってなにさ。

あれって引っ越したばっかりじゃないよねえ。

なんで嘘つくんだよ」


二人が呆れ顔でオレを見ている。

まるで物分りの悪い子供を見る目だ。

オレも物分りの悪いガキは嫌いだ。

だけど、物分りのよすぎるガキはもっと嫌いだ。

「本当は、ばれなきゃ、マンションはずっと隠しておくつもりだったんだろ?

最近引っ越したようにはとても見えねえし。

なんで嘘つくんだよ。

オレが今回こっちに来る前から住んでいたんじゃねえのか?

それはリナがあのマンションを中野のおっさんから」


レイカがそれをさえぎった。

「はいはい、わかった、わかった」

レイカが諦めたように手をヒラヒラさせた。

「あたしのことで愛玲が勘違いされるのもイヤだからさ。

じゃあ、マンションのこと教えてあげる。

いいよね愛玲」


「べつに麗華がいいなら・・・」

と言うとそのままリナは部屋に消えていった。

あとは勝手に聞けば、ということか。



レイカは椅子を引いてもう一度テーブルに腰掛けた。

「言っておくけど、あのマンションはね一ヶ月前、イズさんがこっちにくるちょっと前かな、あたしがオトコにもらったものなの。

愛玲じゃないの。

実はあたしね、今囲ってもらってるオトコがいるのよ。

イズさんがこっちに来るちょっと前にそういう関係になったんだけどね。

谷口さんは、あたしが愛玲と一緒に住んでるの知ってたから、ほかに二人で気兼ねなく会える部屋が欲しいねって、あのマンションをくれたの。

でもさ、あたしイズさんには若い男紹介してって、いつも言ってたじゃない?

だからもしイズさんの知り合い紹介してもらえるんなら谷口さんを適当なとこで切ってもいいかな、って、そのくらいの気持ちだったの。

あ、オトコの名前、谷口さんていうのね。

だからあたしはね、囲ってもらってるオトコがいるってのをできればイズさんに知られたくなかった。

イズさんに若い知り合いを紹介してもらったら乗り換えようとマジで思っていたからね。

まあ今でもそう思っているんだけど。

うん。

絶対谷口さんとは面倒くさいことにはならないようにするからさ、ね、いい人いたら紹介して。

・・・まあそれはいっか。

でね、そうなったらそうなったでまた愛玲とあっちのマンションで一緒に住むつもりだったし

・・・ということで、あのマンションはそういうことなの

・・・わかった?」


もう少しのところで、レイカが囲われてたのは知ってたよ、と言いそうになった。

レイカがオトコに囲われてるのは例のブログで承知済だ。

そうか、あのブログの作者がこのマンションを買ったのか。

ふーん、谷口っていう名前なんだ。

カネ持ってんなあ。

多分、レイカは嘘を言っていない。


「だいたいおかしいと思わない?

引越しとか言って、こっちのアパートの荷物が何一つ減ってないでしょう」


「うん、おかしいと思ってた。

だから余計マンションのこと隠そうとしてるんじゃないかって思った」


「はは、そっか、そうだよね」

「じゃあ、あっちのマンションのインテリアとかは全部新しく買ったってこと?」

「うん、そう。

あーーでもちょっと違うかな。

えとね、愛玲は愛玲でさっきの中野さんからプレゼント攻撃で、何がいい?何が欲しい?っていつも聴かれていたのね。

だから、じゃあ新しい部屋のカーテンや家具なんかのインテリアを買ってもらっちゃえばってことになって、中野さんのプレゼントでマンションのインテリアを全部そろえちゃったのよ。

あたしがマンションを買って貰って、愛玲がインテリアを買って貰う。

そのうち一緒に住むんだからフィフティフィフティってことよね、持ちつ持たれつ。

まあ、だからこっちのアパートの荷物は何一つ減ってないってわけ。

そういうこと。

だからイズさんがさっき言ったように、ばれなきゃマンションはずっと隠しておくつもりだったし、イズさんがこっちに来るちょっと前からあのマンションには住んでいたわ。

住んでいたというより谷口さんと二人で会うときに使ってた、って感じだけど。

だけど、唯一イズさんが勘違いしてたのは、あのマンションは愛玲が中野さんから貰ったものじゃなくて、あたしが谷口さんから貰ったもの、ってこと。

どう?安心した?」



外が明るくなり始めてきていた。

リナはいつの間にかジャージに着替えてソファーに寝転んでいた。

ダサダサのジャージ姿のリナを見て、確かに少し安心した。

ギリギリまで本当のことを明かし、肝心なところはぼかされている気もするが、タイムオーバーだ。

冷めたコーヒーを飲み干し外に出た。

外に出ると陽射しはじんわりと暑さをふりしぼりはじめ、街のあちこちで蝉がジワジワ鳴きだしていた。










「中野さんはただのお客さんだから」

信じたいのは山々だが、まわりを見れば「日本人カラオケ」のキャストには信じ切れないものがある。

お店の中だけの擬似恋愛。

だがそれだけではお客もキャストも満足しない。

中国ではお店の中だけじゃなく店外でもたくさんのキャストが擬似恋愛をしている。

擬似恋愛という名の売春。

「スケベおやじの下心」と「ジャパンマネー」

要は「需要」と「供給」だ。

お店がはねてから一晩だけスケベおやじの相手をする。

キャストは一晩我慢するだけで、まともに働いているOLの一ヶ月分の給料を手にできるのだ。

貧しい中国でそんなおいしい話は他にない。

一方、スケベおやじにとっては、たった一万円でオンナが抱けるのだ。

日本では見向きもされないようなイイオンナと一万円で一晩やれる。

逆に日本でそんなおいしい話はありえない。

「需要」と「供給」。

円パワー。


だからといってオレは中国の女性を身持ちがユルい拝金主義者とは思わない。

考えてみれば日本人だって同じだろう。

五万円払えば女子高生がホイホイついてくるご時勢。

OLの一ヶ月分の給料を、例えば二十万円をあげれば一晩付き合うキャバクラのキャストは山ほどいるだろう。

中国ではそれが一万円だということ。

そういうことだ。











上海に来てから一ヶ月半が経った。

今日は仕事が休みなので昨日はリナのアパートに泊まった。

もう昼前くらいだろうか、陽の光りが窓から鋭角に降り注いでいる。

ベッドで目が醒めてリナを見ていたらリナも目を醒ました。

いつからそうなったのかわからないが、オレは左側が好きだ。

歩くときも、座るときも、寝るときも、いつも左側にポジションをとる。

何も利き腕を自由にさせるためじゃない。

もちろんそれも大切なことだけど、オレが右利きだったとしても、やっぱり左側がいい。

安心する。

右側に横たわるリナはオレの肩に頭を乗せて、手も足も巻きつけるようにしてくっついている。

生身の身体は温かい。

リナの身体はとてもしなやかで、密着した肌が心地いい。

「聞いてもいい?」

「うん」

リナがくぐもった声で答える。

遠くでサイレンが鳴っている。

「何でこうなるの?」

「こうって?」

「だから、つまり、いきなりしたい、なんてさ」

「イヤだった?」

「それはないけど、今まで全然そんなのなかったから。

びっくりしたよ」


「うん、なんでかなあ」

リナが笑う。

腹筋がやわらかく上下した。


「何かあった?」

「お店でちょっとね。ぐったりだわ」

「だったら辞めればいいさ」


「うん。そうするつもり」

「日本語学校を卒業したらリナの働くところくらいオレがなんとかするよ。お金だって」

「気にしないで」

「なんで」

「イズに紹介してもらったら、その職場、簡単に辞められないじゃない」

リナは笑ってそういうと再び目を閉じた。

オレはリナの手をはずしてベッドから抜け出した。

「天気いいしどっか行こうよ」

「うーん・・・そうだね」

リナは半分身体を起こし、シーツを胸まで引き上げた。

「そう言えば前にオレが買ってあげた服、オレンジのやつ。

あれ着たの見たことないなあ。

あれ着てよ」


「うん。いいよ。

あ、でもあの服、あっちのマンションにおいてあるんだ」


「え?え?なんで」

「ああ、まあ、いろいろと」

リナが言葉を濁す。

「なんだよ、それ」

「うん、お店であの服を着てて、それからあっちのマンションに行ったとき着替えて置いてきちゃったの」

オレは半分口をあけたまま、リナを眺めた。

店を辞めてほしいと思っているのに、買ってあげた服が店で働くことを応援するカタチになってしまっていることに違和感を覚えた。

オレがあげた服を着て、知らないオトコを接客してると思うと腹立たしかった。

「どうかした?」

「いや、別に」

「なんか気に障った?」

「よくわかんない」






それから服を取りにマンションに向かった。

部屋に着くと買ってあげたオレンジの服はきちんと壁にかかっていた。

先週来たときと部屋の様子は何も変わっていないように思えた。

ただ、ゴミ箱のゴミが片付けられていた。

「ねえ、着替えるからちょっと向こうにいってて」

ああ、とか適当に返事をしてキッチンのほうに行く。




吸っていた煙草を水道の水で消し、キッチンの大きいゴミ箱のフタを開けて投げ込む。

手持ち無沙汰に何気なくもう一度ゴミ箱をあけてみる。

お菓子の袋の上に捨てた煙草がのっかていた。

煙草の火はちゃんと消えている。

ゴミ箱の中には、ストッキング、ペットボトル、ティッシュ、雑誌、などなど。

その底に茶色の布きれのようなものが見えた。

血が固まって変色した色だ。

ナプキン?

ちゃんと包んで捨てろよ、まったく。

一緒に捨てられていた雑誌でそれをゴミ箱の奥へとつつく。

あれ?

・・・いや、違う。

・ ・・ナプキンじゃないな。

なんだこれ?

・・・・・

手にとってみた。

「!!!」

全身がカッと熱をおび、神経が焼き切れそうになった。

思考が痺れた。

「たいがい綺麗とずる賢いはセット売りだ」

これは誰の言葉だったろうか。


そうか、あのときリナが隠したかったものはこれか。

先週、初めてここに来たとき、五分だけ待って、と言ったのはそういうことだったのか。

なんだ、まるっきし思ってた通りじゃないか。

アホらしくて話にならない。

苦笑がもれた。

卑屈な自嘲。

オレはそれをゴミ箱から取り出すと、リナが着替えている部屋に入った。




「もうちょっと待ってね、もうすぐだから」

オレはリナの胸ぐらを掴みたい気持ちを抑える。

「なあ、お前、中野さんとやっぱなんかあるだろ?」

「いきなりどうしたの」

背中のファスナーを上げてリナは笑っている。

「レイカを囲ってる谷口さんと中野のおっさんが同じ会社の同僚だって知ってるよな」

「・・・・なにそれ?・・・・同僚かどうかは知らないけど。

よく二人で一緒にお店に来るわ」


振り返ったリナが、オレの手にしたものを見て固まった。

「そんなにカネがほしいか?

いくら貰ってるんだよ?」


リナが軽蔑に似た目をオレに向けた。

「中野のおっさん、ここに来たことあるよな」

だが目が合うとリナの視線はゆらゆらと躊躇して床に落ちた。

オレは続ける。

「てか、この部屋はレイカと谷口とかいうおっさんがやる部屋だって聞いたけど、

お前と中野のおっさんがやる部屋でもあるよな」



・・・・・・・・・・・長い沈黙。



「何とか言えよ」



「違う・・・・・」

顔をあげたリナの瞳から涙が溢れて、目尻から頬を伝った。

「本当に違う・・・・中野さんとはなんにもない」

「じゃあ、なんだよこれ」

「違う、信じて・・・・本当になんにもないから」

「おっさんが店で暴れて怪我した夜に介抱してここに来たんだろうが」

オレはリナの顔に血で黒く染まった包帯を思いっきり投げつけた。

包帯に包まれていたコンドームが肩に当たって落ちた。

自分がひどく残酷なことをしている気分になった。

だけど怒りは身体の芯を凍らせたまま溶けない。


「信じて、信じて、違うの、本当になにもないの」

リナは泣きじゃくった。

むせながらも、信じて、何もないの、を繰り返す。

頭の芯がぼうっと痺れてきた。



ここにいたくなかった。

どこにもいたくなかった。

暖かい部屋で眠りたいと思った。

遠くでサイレンが鳴っていた。





to be continue・・・・・・




久々なんで頑張っていつもより長めですわ。

次回あたりで最終回かなあ☆










2006/10/09 (Mon) 泳げない魚たち6:マンション
20061009220415.jpg






「じゃ、おやすみ」

「うん、じゃあね、おやすみ」

リナは胸の前で小さく手を振った。

オレはタクシーを降りて、ホテルのエントランスからロビーに入る。

フロントでルームキーを受け取り、エレベーターホールでエレベータが下りてくるのを待つ。

何気なく外に目をやると、リナを乗せたタクシーの赤いテールランプが見えた。

「ん!?」

タクシーはリナのアパートとは反対の方角に走り出している。

このホテルは繁華街から少し離れた大通りに面している。

リナのアパートはホテルを出て左に真っ直ぐいったところだ。

歩いて十分、ダッシュで三分、車ならあっという間についてしまう距離のところにある。

確かに今、テールランプはリナのアパートとは反対の方角に消えていった。

耳の奥、鼓動が「ドクン」と大きく響いた。

地球がうまく回りはじめると、いつもこうだ。

これは神様のいやがらせか。








リナがあれからどうしたのかを確かめたくて次の日も待ち合わせをした。

忙しいといっても睡眠時間を削ればそのへんは何とでもなる。

忙しいからなかなか会えないとか言っておいて、おかしな話だ。

目の前でリナが楽しそうにシフォンケーキを分解している。

「何で?」

「たぶんあたしはウサギ科の女なんだと思う」

「はあ?」

「ウサギってひとりぼっちだと寂しくて死んでしまうんだって。あたしもイズがいつも一緒にいてくれないと死んじゃうのよ」

「あっそ、だったら死ねば」

「ひどーい」

リナはオレを「イズ」と呼ぶ。

名前が「泉」だからだが、発音が英語の「is」と同じで覚えやすかったらしい。


「それでさ、昨日、あれから真っ直ぐアパートに帰らなかっただろ」

会話の流れに紛れこませてサラリと言った。

「あ、え?なんで?・・・帰ったよ」

笑っているリナの目が一瞬泳いだ。

「タクシーでアパートと反対の方に行ったじゃんか。

あんな時間からどこ行ったのよ」


「・・・・・あ、うん・・・あのね・・・XXXX・・・・XXXX・・・・」

わざとオレのわからない中国語で間をつなぐ。逡巡している。何を言おうか。どこまで言おうか。どう言おうか。

「え?なに、どこ行ったって?」

だから考える時間を与えない。さっさと正直に言え。

リナのケーキを分解する手が止まった。

「・・・えとね、実はね・・・言ってなかったんだけど・・・アパートを引っ越したの」

「はあ?」

オレはグラスの水を一気に飲み干した。

「うん、だからね、今まで住んでたアパートを引っ越したのね。今度のアパートは今までのアパートとは反対側になったの。だから、こんどのアパートはそっちで、ホテルから見たら右のほうで、で、だから・・・うん・・・」

しどろもどろ。

「はあ?・・・・それっていつよ」

「えとね、つい最近なんだけど・・・」

とリナは曖昧に言葉を濁した。

カチンときた。

引越し?そんなこと聞いてない。

リナは嘘をついている。

オレは煙草に火をつけた。

「なんでオレに何にも言わねえの?

なんで何にも言わないで引っ越すわけ?

だいたい何で引っ越したことを隠しておくのよ?」


「違う、違う。隠しておくつもりなんかじゃないよ。

あなたが最近忙しそうで、自分のことでいっぱいいっぱいそうだったから・・・。

それにね、引っ越したばっかりでまだ部屋が片付いてないの。

部屋が片付いてから言おうと思っていたからさ。

部屋が片付いたらアパートに呼んでビックリさせようと思っていたからさ・・・

本当、そうなの・・・」


リナは胸元を押さえた。

リナはオレがあげたリングを、店でははめれないからと、ネックレスにして首から下げている。

このリングに誓って嘘は言っていない、信じて、とでも言いたいのか。

「部屋が片付いてようがどうだろうがそんなのは関係ない。

その前に引っ越すことを、なんでオレになんにも言わねえのって?

それに昨日オレと逢ったときになんで引っ越したこと一言も言わねえのよ?

気づかれなきゃずっと隠しておくつもりだったんじゃねえの?」


自分で言っておいて胸騒ぎがどんどん膨れ上がってきた。

「だからそれは、部屋が片付いてから、って・・・」

リナの笑いはどんどんぎこちなくひきつってくる。

「じゃあ、これから行くか」

「え?」

「引っ越したアパートに行くんだよ」

どこまで本当か確かめたい。今すぐ確かめたい。

「ああ、うん、でも部屋が片付いて・・」

「どうでもいいよ、そんなの」

尖った声に、リナは狼狽した。

さっきまでの和やかな空気が一変している。

「いや、でも・・・あの・・・」

リナは何か言おうとしたが、これ以上オレに何を言っても無駄だと判ったのか、結局、観念した。

「・・・・・・いいけど」







ドアの前でリナは言った。

「ちょっとここで待ってて、五分でいいから、ね」

五分間待ってる間に部屋に残ったオトコの残滓を押入れにでも放り込むつもりなのだろう。

日本人も中国人も一緒だなあ、と妙に納得しながら、ああ、とか、うん、とか曖昧に返事をした。

リナが鍵を解いてドアを開けた瞬間、一緒に部屋の中に滑り込んだ。

オレも、日本でやってることと、中国でやってることが、かわらない。

「ちょっと、待ってよ、待ってってば!」

リナが腕をつかんだ。

前にもこんなことがあったようなデジャヴ。無言で腕を振りほどいて奥へと進む。

あれからすぐケーキも残したまま店を出て、リナに案内させて到着したアパートは、日本でいうところのマンションだった。

真っ白な壁に高い天井、斬新なデザインの豪華なマンション。

真面目に働くことがバカバカしく思えてくるほど稼ぎまくっているIT社長が好みそうなマンションだ。

まあ、中国人にすれば日本人の誰もがヒルズ族のようなものだが。

オレは奥に進み、三十畳はあるだろうだだっ広いフローリングのワンルームを茫然と眺めていた。

引越し?大嘘だ。

いつのはなしだよ、それ?

テレビの上のほこり、ゴミ箱のティッシュ、洗濯物、水切りカゴの食器・・・

あちこちに生活感が溢れかえっている。

灰皿をベッドのサイドテーブルに見つけた。

そして吸殻。

リナは煙草を吸わない。






・・・何かがカチリと音をたてて繋がった。






一ヶ月前、オレが上海に着いた日。

ホテルに到着したことをリナに電話で告げた。

前の日の電話でオレが上海に着いたら二人で食事しようということになっていたからだ。

オレの電話を受けて、リナはこれからホテルに向かうと言って電話を切った。

オレはリナにすぐにでも会いたかった。

だからホテルの前の石段に腰掛け、リナが現れるであろう方角をずっと眺めていた。

だが、十分待っても二十分待ってもなかなかリナは現れなかった。

ただその間、何度も携帯に電話が掛かってきた。

「もうすぐ行くよ、今どこにいるの」

と、オレがどこにいるのかを、なぜかリナは何度も聴いた。

オレは、ホテルの前の石段で待っているよ、と何度も答えた。

リナのアパートはホテルから歩いて十分くらいなので、

「オレがアパートに迎えに行こうか」

というと

「ううん、大丈夫、すぐ出るから待ってて」

と言う。

結局、そのときはホテルの前で一時間待たされた。



今、わかった。

今、繋がった。




あの日オレがホテルに着いたとき、リナはこっちのマンションにいたんじゃないか?

だからあのとき、オレがどこで待っているのかをしつこく聴いたんじゃないのか?

そしてリナはオレがホテルの前で待っていることを知って、わざわざ、大きく迂回してもうひとつのレイカと住んでいるアパートの方角からホテルに現れたんじゃないだろうか?

だから一時間も遅れたんじゃないのか?

こっちのマンション、すなわちオレの知ってるリナのアパートと反対側から現れたのではオレが不審に思うから。

不審に思ったオレが、リナにお金を貸してくれなくなるかもしれないから・・・。

あの日、オレは四万元を用意していた。

日本円にして六十万円。

リナが「リージェンシー」のオーナーママになるために貸して欲しいとオレに頼んだカネだ。

オレはリナにキャストを辞めてほしかった。

オレは、リナと結婚してもいいかな、と本気で思っていた。

今でも思っている。

結婚の話は二人の間で何度も持ち上がっている。

ただリナは日本に住むつもりはこれっぽっちもなかった。

会社のみんなには、お前のカネ目当てだろ、やめとけよ、と言われた。

確かにそれはそうなんだろう、ということは自分でもわかっている。

それでも中国に骨をうずめる覚悟、と言うと大げさだが、それでもいいかなと思い始めていた。

キャストという仕事は誘惑が多い。

リナくらいのキャストになるといろんな日本人がカネをちらつかせて囲おうとする。

日本に帰ってきているときはそれが不安でいつも電話していたようなものだ。

会えない時間が愛を育てるのは郷ひろみの歌の中だけだ。

だからリナがオーナーママになるなんてオレにとってはとんでもないことだったが、電話で反対し続けてもラチがあかなかった。

それより顔をつき合わせて話したほうが早いと思い、一応カネは日本から用意していくと伝えていた。




あの日のことは、リナがホテルに遅れてきたのは、そんなオレの気を損ねないようにとの立ち回りだったんじゃないだろうか?



リナは、今回の出張にくる前からすでにこのマンションに住んでいた。

いや、このマンションとレイカとのアパート、二つの部屋に住んでいた。

オレといるときはレイカと同居しているアパートで寝泊りし、その裏、このマンションを与えたオトコとはここで逢瀬を重ねていたに違いない。

いつの間にか、オレが日本に帰ってるあいだにオトコに囲われていた。

電話をかけてきた中野のおっさん。

あのやろう。

心の芯にしこりとして残っていた疑心暗鬼がむくむくと眼を醒ます。

それはだんだん確信にかわっていく。

当然今までリナとはセックスしまくった。

だが、時にはSMを試したり、イメクラごっこをしてみたり、わき腹がつるような体位にトライしたりという日本人カップルなら誰でも普通にやっているスパイス的なセックスをリナは一切いやがった。

リナはフェラやクンニなどのオーラルをする日本人を「きちがい」呼ばわりしていた。

そして、そういった行為はずっとかたくなに拒んできていた。

付き合ってからずっと。

それが今回、来てみるとどうだ。

リナは積極的に口に含み懸命に舌を絡ませるようになった。

「初めてだから上手くできないけど・・・」

というリナの変化にスケベな日本人のひとりであるオレは内心喜んでいたが、喉の奥深くまで含んでのスムーズな動きはどう考えても初めてのそれではなかった。

動くたびに内腿に触れるサラサラした髪の感触までもが狙ったものであるかのように感じた。

頭の隅で不信感を抱きながらも、このまま爆ぜてしまうのではないかと自分を抑えるのに苦労した。





・・・・そうか、そういうことだったのか・・・・

なんとなく想像はできたがオレは目を背けていた。やっぱり他のオトコに教えられたのか。

ずっしりと重いクサビを胸に打ち込まれたようだ。







オレが灰皿の吸殻を睨んでいるのに気付いてリナが言った。

「それ、レイカの吸殻だからね、本当だよ」

確かに灰皿の中の煙草の銘柄はレイカが吸ってる煙草と同じものだ。



「これからはレイカとは別々に住むつもりか?」

自分の存在価値を疑ったことなんてなかったけど。

「ううん、また一緒に住むつもりよ」

リナにとって、自分だけは違う男と思っていたけど。

「なんでここにはレイカの荷物がないんだ?」

これ以上、詮索しないほうがいいのだろうか、とも思う。

そしたら案外上手くやっていけるのかもしれない。

リナにとってオレが一番ならいいじゃないか、オレがリナの全てじゃなくてもいいじゃないか、と。

「レイカが忙しくてまだ持ってきてないだけ。そのうち持ってくるわ」

だけど止まらない。

「ふうん・・・じゃあ前のアパートにはまだレイカはいるんだ」

レイカがこのマンションを知っているのか確かめたい。

「うん、そう」

レイカがこの部屋で煙草を吸ったのか確かめたい。

「じゃあ、これから行こうか」

どこかへ続くと思っていた二人のレールは結局どこへも続いていないのかもしれない。

「え・・・・・どこ?」

レールは当たり前の風景に飲み込まれていくだけかもしれない。

「レイカがいるあっちのアパートに」

それでもレールの終点を確かめたいと思った。





これは先々週中国から帰ってきた後輩の・・・以下同文・・・

こいつは日曜日からまた中国に行ってしまいました。

私も明日から新潟に出張です。

なんか今日は雑な文章になった気がしますが

そういうことなんで許してくださいね。


んじゃ、行ってきまーす☆







【コメント 嬉しい♪楽しい♪大好き♪】

コメントするとタヒチ旅行が当たる!!!    かもよ・・・

【ばついち。だっけなんだや】

FineDays

Author:FineDays
プロフィール写真を変えてみた。
女豹のポーズの写真とどっちにしようか悩んだけどな。
思いきり背中そらせた上目使いのやつ。
でもやっぱ、まだ処女性をアピールしたい年頃じゃん?
「美尻伝説」打ち立てんのはまだ先でいいかなあって。
もうちょい清純派路線つらぬくわ。
でもなそうは言ってもな
アンアンの「SEXで綺麗になれる」特集とか見て来る日に備えてっから☆

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