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2006/10/29 (Sun) そんなBanana
sora600.jpg

↑内容とはまったく関係ない。描いてるとき気持ちよかったんでw


今、バナナひとふさ、つまみに買ったけど、こんな食えねえや

バナナって言えばさ、最近あんまり人気なくない?

オレがチビッコのころは大人気だったけどな

バナナの皮は最近あまり落ちていないけど、オレがチビッコのころはよく落ちていたよね

バナナは高級品だったからね

バナナの皮を何気なく背広のポケットから落とすのが紳士の嗜みであり、ステータスでもあったからね

レディもやっぱ

「あら、いやだわ。わたくしとしたことが。ホホホ」

なんてスカーフの代わりに巻き付けて、失笑されるのが良家の出である証明だったころだからさ

そのころはさ、死に際の言葉の八十二パーセントが

「バナナが食べたい」



十三パーセントが

「メロンが食べたい」



五パーセントが

「カツドンが食べたい」

だったらしいから。

おじいちゃんは最後

「サイダー飲みたい」

で超少数派だったんだけどね

バナナがいかに高級品であったかわかるっしょ?

そんくらい「バナナ様」だったからね

でも今じゃさ

バナナは高級品どころかすげえ安く手に入る食品に成り下がってしまってる

ありふれているもんね

街を歩けばバナナにぶつかる、そんな食品だもんね

だからといって皆が食べているか?というとそんなこともなくて

考えてみ

道を歩きながらバナナを食っている人、見ないよね

「彼女、バナナ食べない?」

ってナンパの道具にしてるのも見ない

また、二本のバナナを頭に乗せて

「牛!!」

と言っているものも見ないし

喫煙コーナーでバナナを咥えている者も見た事がないわね

それほどみんなバナナを食わなくなっちゃった

今じゃ実際バナナ食うっていっても

ジュースにするとか

パフェに入れるとかでしか食わなくなっちゃったんじゃね?

あのバナナの黄色い皮をめくって一気に食らう

そういうことがないでしょ最近?

オレ、さっきめちゃめちゃ、食ったけど

「あるある」とかで、すげえ栄養価の高い食品だから食べなさいって勧められたりする

でもそれって裏を返せば、他にも美味しい果物はあるからねという、そんな食品になっちゃってる

バナナの底力を見くびられている

これは由々しき事態である

あの隆盛を極めたバナナがもはや絶滅の危機に瀕しているとは・・・


そんなことを考えながら酒を飲んでいる

バナナをつまみに

食いすぎて、バナナっ腹、である

衝動買い

も、いらね



ところで

バナナの皮を踏み付けてすってんころりんした人っている?

それ見たことある人いる?

バナナの皮ですべる

すげ古典的なギャグだけど

だいたいあれって、そんなすべるのかな?

バナナですべってるのって

昔の漫画とかコントとかコメディ映画でしか見たことなくね?

「八時だよ!全員集合」とか、そんなのでしか見たことなくね?

最近、見ないもん

でもほんとにすべるのかな?

リアルにさ

実験してみたいね

仕掛けてみたい

喫茶店の窓から歩道に仕掛けたバナナの皮をじっと眺めるの

もうあの嫌味なまで黄色い姿態はなくなり、黒くなったバナナの皮

しかしだ、まだその物体はバナナの皮である尊厳は保っていて

ヒトデのように皮を広げている

オレは人が通るたびに緊張して、そして期待する

ワクワクもんよ

やっぱりバナナの皮ですべるのは立派な紳士に限るよね

それもシルクハットをかぶって

ステッキを振り回しながら

懐中時計に目をやっている

そんな紳士がすべるのを見てみたい


そう願うね☆


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2006/10/24 (Tue) 徒然に・・・


あれ?トラベング?

「徒然」で二歩進んじゃったんだけど

いいよね

前はさ今日はこんなこと書こうかなとか考えて書いてたんだけど

今はなんも考えずポチポチ打つのが

気分だったりするわけで


まあ、またそのうち元に戻るんでしょうけど

オレにとっちゃ今のライブ感が気持ちいいわけで

頭に浮かんだことをそのまんまポチポチと、ね

ええ、今日も飲みながらです



今日、帰り道のスーパーで

つまみにする寿司買ったのね

閉店まぎわで半額になった寿司ね

八百円がヨン様

ゲット


で、レジ持ってったら、なんか違和感

寿司の他にもいろいろ買ったんだけど

あれ?高くね?

って感覚的に思ったの

で、袋につめるとこでレシート見直したら

寿司が半額になってなかった



「すんません、これ半額になってないみたいなんけど」

ってバイトの高校生に言って

ヨン様にしてもらったんだけど

このスーパーで前にも同じことがあったこと思いだした



まだ、税込みの金額表示になってないころ

同じシチュエーションで

八百円の寿司が半額

で、今回と同じようにレジで半額なのに定価で打たれたの

「すんません、これ半額になってないみたいなんけど」

て言って半額にしてもらう

そしたらピーして

八百円を一度手元に返してもらって

またピーして

四百円払った

でもね、あれ?って思った

消費税はどうなった???

最初に八百円の消費税で四十円払って

半額なったら消費税の半分の二十円も返ってくるはずじゃね?

で高校生のバイトに言った

制服のエプロンの下が学校のスカートなんで高校生のバイトって一目でわかるんだけど

「消費税分ってどうなの?」

「へ????」

よく分からないようなんで説明してあげたら

「ああ」

っていうから分かってくれたと思ったら

続けて

「ん?お??え???」

ってよく分かってない

でももうレジ待ってる人がたくさん並んで

どした?みたいな空気ながれてる

二十円だし、もう面倒くさくなって

そのまま帰ってきたことあった



はいオチはありません

しいていえば、私は小心者ですってオチ???



北海道のみなさん、日ハム三戦目勝利おめでと

そして、よっしさん、無事出産おめでと

一時ねブログ止めようかな、って時期があって

いろいろと面倒くさい時期でね

そんときね

よっしさんが赤ちゃん生まれるまでは続けよ

って思ったことあった

マラソンであの電柱まで、あの電柱まで、っていって

走り続ける感覚に似てたかも

わかります?

そんなこと思いだしたわ


出産っていえば

オレが高校生のとき姉ちゃんが赤ちゃん産んだのね

この前の夏休みにウチに彼女とアソビにきた甥がそれなんだけど

で、姉ちゃん、出産後一ヶ月くらい実家に帰ってきてた

姉ちゃんが風呂入ってるときかなあ

その赤ちゃんをあやしててって言われて

うん。わかった。ってあやしてるときに

ここだけの話

赤ちゃんの甥にキスしたことある

これは甥には言ったことないし

姉ちゃんにも言わなかった


アイツのファーストキスの相手

きっとオレよ

ざまあみろ

オレんちでエッチするからだ


前もって仕返ししてたってことだな

うん。そんなことも思い出した



いろんな思いが浮かんで消える・・・

そんなこんなを飲みながらポチポチと☆










2006/10/24 (Tue) 徒然なるままに・・・



寒いね今日は

雨も降ってて

こっちだけかな

家帰ってくつした脱がないの今日が初めてだな

今、何の気なしにパソコン開いてます

なんか更新しようかなあってなもんです

お題はないです

徒然です






そうそう優香

昨日、「輪廻」ってホラー映画観たら

優香が主演で

優香って結構ホラー似合うなあって

↑悪い意味ではありません

優香ってちょっとほのぼのした感じで眼とかトロンとしてるけどさ

これがなかなかどうして

最後にいろんなもんが見える優香が発狂してるシーンがあったんだけど

あっ、けっこうやるなあ、コイツ

って感じで

新境地開拓したね

ホラー路線

管野美穂とためはれるかも

管野美穂もオレの中じゃホラーが似合う女優

管野美穂ってすっごい美人に見えるときあったりするね

なんか失礼な言い方?

いや管野美穂はいいよ

でもたいして美人じゃなく見えるときもあるね

なんなんだろ

なんだっけ?

「富江」?

死んでも死んでも死なないやつ

アレ観たときそう思った



でもさ、やっぱさ、ホラーは日本製がいいね

冥土いんジャパン!に限るね

いちばん進んでる

いちばん恐い

日本人だからかな?

「リング」とかアメリカでリメイクされたじゃない

それ観た友達が恐くないって言ってたんで観てないんだけどさ

想像つくもんね

乾いてるって

ああきっと恐くないんだろうなって

もっとさジメジメ陰湿な雰囲気かもしださないと

ちょっとねえ

文化の違いなんだろうけど

ま、それはお互い様で

あっちはあっちで貞子がカクカク動くの観て笑ってるかもしれないしね


そうそう

前にさ「アイズ」っていう韓国ホラーを渋谷パルコでやっててさ

角膜移植したらそういうのが見えるようになったコの話で

角膜を提供してくれた人の怨念だかのストーリーだっけ??

結構評判で

最後まで見れなくて退館する人が続出したとか

途中で退館する人はチケットもらっておけば

もう一回チャレンジできるとか・・・

そこまで言われたら観るしかねーと思って

うん。行った

・・・だまされたよ

なんか映画の趣旨を間違えて入ったっぽい親子が途中で出てったけど

そのほかの人は全クリ

みんな覚悟して観にきてたからかなあ

映画の中のビビらせるちょいネタは日本のパクリが多い

鏡ネタ、エレベーターネタ、携帯ネタとか

ああこれね、てかんじで



あ、でもあっちもんでも

「エクソシスト」はちびったわ

小学校のときアニキと電車乗って街まで観にいったんだけど

帰りにはもう真っ暗になっててさ

駅降りたら家までは橋を渡って土手歩いて帰るのね

あのころは田舎なんでほとんど街灯もなくて真っ暗の土手

そんなとき

いきなりアニキが、オレを一人残してダッシュだもん

一瞬で一人暗闇の中に残されて

もう恐くて恐くて

わけもわからずビエンビエン泣きながら走って追いかけた

エクソシスト観たあとだからね

恐さ絶頂真っ只中でそれだもん

泣くよ、そりゃチビッコは



あのころは素直だったしね

そう、純情で素直なガキだった

みんなチビッコはそんなもん?

でも自分で言うのもなんだけど

計算高いいやなガキではあったな

その上、オヤジが国鉄(今のJRね)で働いてて

毎日のように電車に置き去りにされた週刊誌とかマンガ本を持って帰ってくるから

よけいな知識だけ満載されて知識のバランスが変な子供だった

小学生のころから「週刊実話」とか「週刊大衆」とか

エロい週刊誌読んでた

布団の下に入れて一人のとき取り出して読んでたからね

そーゆーの読んでると親が困った顔するから布団の下とかに隠してたんだけど

漢字もたいして知らないころなのにね

だからガキのときはまず週刊誌でセックスという行為を知って

それからしばらくたって

そうするとなんとなく子供が生まれることを知った

四年生くらいのときかな

エッチな写真見てもチンコたたないころだから

何がうれしくて週刊誌見てたんだろ?

マンガも喜んで読んでたけど

それだけじゃ何か満たされなかったんだろうな


で、そのあと学校で

「赤ちゃんってどうやって生まれるんだろう?」

みたいな話になったとき

友達だか先生が

「こうの鳥が運んでくるんだって」

だか

「こうの鳥が運んでくるのよ」

って言ったの

オレはびっくりしたね

オレの幼い知識がくつがえされたからね

「え!!!そうなの?オレ、セックスで生まれると思ってた」

って言ったもんね

で、それからは赤ちゃんは鳥が運んでくるもんだと

ずっと思ってたけどな

そんなガキだったのよ



あれ?

なんの話だっけ???



ま、いいか☆





2006/10/22 (Sun) ジョッピー☆


本日より通常営業となります


ブヒブヒ、パオーーーン!!!!

あっれ???

やべ

なんか久々でテンション忘れた

んじゃ、リハビリがてらテンション抑え目に

レッツ、ニャゴーーーーーーー!!!!!(抑えてますってば




今日鎌倉のラーメン屋でメシ食ってたら

テーブル席に家族連れがいて

チビッコが二人いたのね

このチビッコが

イスの上に立って

喉を手で叩きながら

「ワレワレハ・・・」

と宇宙語?を喋りだした

うわっ!まだあるんだ、それ!!!


そいえば最近、喉叩いてない

久しぶりに叩きてえなあ・・・・





そんでさ

ロッカーみたいな、音楽やってますって感じの長髪オトコが

カウンターでラーメン食っててさ

髪を押さえながら食うのよ

気になるのよ、ドンブリに髪の毛浸かりそーで


結えや

そんときくらい輪ゴムで縛れや

女かっつーの


そんで、こいつったらラーメンを

音立てないで食うんだよ

チルチル食ってんの

基本がなってない

ジョルジョルいけ

汁とばせ

汗かけ

ドンブリ持ってツユ飲み干せ




で、足組んでケータイ見ながら半身でラーメン食ってんの

セレブがファッション誌ながめて紅茶すする体勢

何者よ?おまえ?

チンポ見してみろ!!!


そしたらケータイかかってきて

「うん。うん。それってジョッピー来んの?

あ、そうなんだ。

行っとく?

アーユー岸部いっとく??

ははは。

うん、行けたら行くよ」



ジョッピー?つった??

いかしてんね、その名前

アーユー岸部行っとく?

バンドうちで流行ってんの?


あーーあ、どうでもいいけど、こいつ、ぜってー行かねえな

岸部一徳は、シローのお兄さん

「行けたら行く」は、行かないに限りなく透明に近いブルーだ




だいたいだ

ラーメン屋のカウンターで脚組んで

音もないのにフンフンと貧乏ゆすりみたいにリズムとって

超ーうぜ


おーーい、チビッコー!

シーボーズと一緒にこいつを宇宙墓場に連れたってーー☆














2006/10/20 (Fri) 泳げない魚たち10:最終章
20061020213459.jpg






ひゃほーーー!最終章!!!

えとね、今さらだけど断っておく

これはオレが考えた話じゃないからね

後輩の実話ね、リアルね

だからドラマみたいな劇的なエンディングはねえよ

後輩もこれ中国で見てるからさ(二週間前にまたあっち行った

だから

そこんとこ期待しないで、ヨロシク♪



んじゃ

ひぃーーーーーうぃーーーーーゴっっっっ!!!!!!















「お前が浮気してたら死ぬからな!」

ドラマでも言わない馬鹿なセリフだった。

さすがに愛想を尽かされると思った。

だがリナは目を閉じて何度も頭を振っていた。



あれからリナとは一度も会っていない。



へんなプライドだけは残っていて自分からは連絡できなかった。

不細工で格好わるいプライド。

ちんけなプライド。

どん詰まりの崖っぷちでオレの時間は止まったままだ。



そして昨日、メールがきた。

「明日の夜、ホテルに行くから会ってほしい」

と。

リナはオレが日本に帰る日を覚えていてくれた。

びっくりした。

うれしかったけど

うれしさよりも、罪悪感のほうが大きかった。


オレはあれから、何度もホテルにオンナを連れ込んだ。

リナには、浮気するな、とさんざん言っていたオレが。

憂さ晴らし。

そんな自分を憎み、同時にそこからずっと逃げつづけてきた。

逃げつづけてきたけれど

オレの時間は、あの日から一歩も前に進んでいなかった。

自分から逃げ切れるわけなんか、ない。

二十八歳。

いつまでも感傷に浸っていられるほど暇じゃないし、年寄りでもない。

立ち止まっていれば、感傷は美化されて居心地のいいマユになる。

そこで膝を抱えてうずくまっている自分の気持ち悪さに気づけなくなったら、おしまいだ。

そんなことはわかっている。



人は一人で生きている。

でも、一人では生きられない。

いつも一人で歩いている。

でも、一人で歩きつづけるのは、淋しい。

だから誰かに一緒に歩いてほしい。

だけどそれは一人でちゃんと闘っているヤツの権利だ。

逃げ回っているオレにその資格は、ない。



オレはオンナを抱くたびに

オレはなんでここにいて、なにをやっているんだろうと思った。

違うオンナを抱きながら、目を閉じてリナを思い出していた。

そのときは悲しくて切実だったけれど、やっぱり気持ちの悪い行為だと思う。



自己嫌悪に落ちた。

オレの時間は動き出すのだろうか。








コンコンと部屋のドアがノックされた。

緊張してドアを開けた。

久しぶりに会ったリナは少し痩せたように見えた。

それでも、いつにも増して可憐な感じがした。

オレが買ってあげたオレンジのミニのワンピースを着ている。

「よっ!ひさしぶり」

リナが照れながらも、えらそうに日本語で言った。

「うん、ひさしぶり」

オレは目があわせられない。

「明日、帰っちゃうんだよね?」

「ああ」

「やっぱそうだった。

だと思って来たんだからさ。

違ってたら間抜けだもんね」


明るいリナの声。

淋しさが滲んでいる気がしたのはオレの勝手な幻想だろうか。

テレビをつけた。

シンとした部屋では声の輪郭がはっきりしすぎて、つらかった。

「もうメシ食った?」

いつものようにぶっきらぼうに聴いた。

「ううん、まだだけど」

「じゃあさ、どっか、メシでも食いに行く?」

行き先はどこでもよかった。

・・・また逃げている。

先延ばしにしようとしている。

「ううん・・・・今日はサヨナラを言いにきただけだから。

それにこれからお店なの」


リナがオレの心中を見透かしたように微笑した。

「あ、そっかそっか、そうだよね」

ひょっとしたらリナとやり直せるのではないか、という虫のいい期待があった。

だからサヨナラという言葉に胸の奥がズキンと痛んだ。

見る気もないテレビのほうに視線を向けた。

小泉首相が参拝しただの、どうしたのと中国語でニュースが流れている。

視界から締め出した。

「うん。サヨナラだ」

言葉にすると急に現実味をおびるのを感じた。

「ま、しょうがないっか」

ホントにいいのか?

だってしょうがないじゃん、そう言い聞かせる。




「しょうがなくなんかない・・・」

リナが呟いた。

「え?」

オレはねこじゃらしを目の前で振られた猫みたいに反射的にリナを見る。

自分でしょうがないと言いながらも気づいてほしいという卑屈な願いがどこかにある。

でも本当にしょうがないんだとも思っていた。

「ううん。なんでもない」

「なんだよ」

「・・・あなたと本気で結婚したいと思っていた」

「なんだよそれ?オレだってそうさ」

「でもあなたは決断してくれなかった」

「お前が日本にくる気があればすぐにでもそうしたよ?

でもお前は日本にくる気なんかないって言うから。

それに働く会社を紹介するから店を辞めてほしいって言っても全然辞めないし。

そうだろ」


「弟がいるから日本には行けないって言ったじゃない。

それにお店だって、好きであんな店で働いていたわけじゃない。

酔っ払いにベタベタ身体を触られて、それでもニコニコしている気持ちがわかる?

だからあなたにはそんなところ見せたくなくて。

だからお店には来てほしくないって言っていたの」



「そんなにイヤならさっさと辞めればよかったんだ。なんだよそれ」

「そんなのあなたみたいにお気楽に生きられる人に話してもわからない。

あなたはあたしをどこか馬鹿にしている。

中国人を蔑んでいる。

だからはなしてもどうせ心の中でせせら笑うだけじゃない。

そんなにイヤなら辞めればいい、とか、好きなように生きればいいとか、あなたが言いそうなことなんて全部予想がつく。

だから話したって無駄なの!」


リナには母親がいない。

死んでしまった。

そして残った親父はどうしようもないダメ親父らしい。

故郷の武漢には弟が二人いる。



確かにどこかにオレは中国人に対してお前らとは違うという傲慢な気持ちがある。

つまらないプライドで勝手に周りを見下して壁を作っているつまらない人間だ。

窓から車のテールランプが見えた。

置き去りにされる気分を感じる。

そうやって世界はどんどんオレを置き去りにしていく。

意識が水の中に沈み込んでいく。

テールランプが瞳を突きぬけて脳裏でゆらめく。

熱帯魚のようだ。

ひんやりした寂しさがこみあげてくる。

オレは小さな微笑でそれを押し込める。

「また喧嘩だ」

「ごめんなさい・・・」

リナはいつものように目を伏せて胸元に隠れているリングを押さえた。

おれたちは本当に愛し合っていた。

それは間違いない。




リナの足は外反母趾気味で痛々しい。

キャストの職業病みたいなもんだ。

この一年で明らかに骨までが変形し、皮膚がケロイド状にただれてかなりひどい。

リナのアパートでその足を見たとき胸が詰まった。

その痛々しく変形した指はリナの生き方を象徴していた。

それまではキャストなんて綺麗なだけでラクしてる怠け者だと思ってきた。

今は違う。

リナの言いたいことはよくわかっているつもりだ。

でも、だからこそ辞めてほしいと願っていた。



「あ、そうそう、お金返すね」

「え?・・・お金?」

「そう、あたしがあなたから今まで貰ったお金。

六万元でいいよね。

今はこれしかないけど、働いてちょっとづつ、きっと返すから」


そう言うとリナはバッグから輪ゴムで止められたお金を出した。

きっと一万元もないだろう。

だけどこれがきっと今のリナの全財産だ。

リナは今までオレがあげた携帯代やら何から何までを返すつもりなのか。

六万元は九十万円だ。

リナは一年間「リージェンシー」でタダ働きするつもりか。

オレは絶句した。

そんなことをいう中国人はいない。

カネに貪欲な中国人、それはリナも同じだと思っていた。

中国人にとって途方もないお金を返すと言うその決意に言葉を失った。


はっきりしているのは、

オレはリナの気持ちの重みに決定的に負けている、ということだ。

オレには、ここに一緒にいる資格すらない。



「お金はいい・・・いらない・・・」

オレは小さく呟いた。

切実さで決定的に負けている。

リナはこんなに必死に切実に生きている。

オレは、いつものらりくらりと周りの顔色をうかがって、不平ばかり溜め込みながら生きてきた。

オレは、リナには浮気をするな、と言いながら喧嘩をすれば違うオンナを抱いていた。

目に前にいるリナとの距離がひたすら遠い。

オレは二十八歳にして空っぽだ・・・・








それから「サヨナラ」と言ってオレたちは別れた。

お金なんか受け取れるはずがない。

罪悪感と自己嫌悪がどんどん重みを増していった。

大声を上げて泣きたくなった。









日本に帰ってきてからも考える。

リナはどんなに問い詰めようと、中野さんとは何もない、と言い続けた。

いつも真摯な態度で、信じて、と言い続けた。

本当に何もなかったんじゃないだろうか。

本当にただのお客さんだったんじゃないだろうか。

あのころオレは絶対浮気していると思い込んでいたが

今では、よくわからない。




ただ中野さんの電話は今でも恨めしく思う。

あのたった一本の電話からオレたちはこうなってしまったのだから。

あの電話さえなかったら、と思ってしまう。

結局、中野さんとは、あの電話で一度声を聞いただけだ。






日本に帰ってきたら会社のみんなから、痩せたねえ、と言われた。

それはそうだろう、ほとんど眠れない日が続いていたのだから。




日本に帰ってきて初めての休日だ。

久しぶりに街に出てスロットをした。

嘘みたいに出まくった。

笑ってしまった。

八千分の一の確立のアタリをレンチャンで引いたのだ。

こんなことは初めてだった。

ヤバイなあ、死んじゃうのかなあ、と漠然と思った。




だからそのカネでみんなと飲みに行った。

さんざん酔っ払って騒ぎまくった。

三軒目でカラオケを歌いまくった。

お開きになって、店を出たあと路上でも歌っていた。

笑いまくった。

今日はメチャクチャ笑った。

死ぬほど楽しかった。


























それでも


風は光らない。


風景は動かない。


オレの時間はあの日から止まったままだ。















Fin・・・・・・・



























てことで

これが今の時点でのリアルなエンディングです


でもね

日本に帰ってきてから、彼女からメールが一通きたっていってましたよ

内容は・・・・うーーん、秘密です

だって

彼のこのはなしはまだ途中なのかもしれないからね



すでに今ごろ中国では

止まったままだったカレの時間がまた動き出しているかもしれません

またヨリ戻した♪って帰ってきたり

全然、ありえる



そのときはまた「泳げない魚たち」復活か???


てことで、最初は三、四回で終わるつもりが

長々となってしょまいましたが

今までここまで読んでくれた方、ホントさんきう!!!!!!

心から、あらヴゅ☆









2006/10/18 (Wed) 泳げない魚たち9:収束
またまた、いいかんじで酔ってます。

ってか、かなり酔ってます。

学習しろや!と自分に言いたくなる今日このごろ

皆さんいかがお過ごしでしょうか?

マエオキはデリートの線で

いってみよっ!!!うりゃあ!!!!








「別れようか」






別れようか・・・

上海に着いた日もそう言った。

あの夜、オレは日本から用意してきた四万元をリナに渡して言った。

「そのカネで「リージェンシー」のオーナーママになるんだったらそれもいいだろう。

その世界で生きていく覚悟があるのならそうすればいい。

でもオレはお前と別れる」


と。

するとリナはうろたえて泣いた。

「ごめんなさい。

許してください。

別れるなんて言わないでほしい」


しゃくりながら中国語と日本語で謝った。

今思えば、オレはただそれを言わせたかっただけだ。

狼狽するリナを見て安心したかっただけだ。

「別れ」を口にしてリナを試した。

日本に帰っている間に幻想でむくむく大きくなった嫉妬心がそうさせた。






「・・・あたしのこと、もう信用できない?」

「そうじゃない」


疑い続けるのも、信用し続けるのも、もう面倒くさくなっただけ。

これからずっとリナを信用し続けることができればどんなにいいかと思う。

どんなに楽かと思う。

でもそう思い続けられるほどオレは鈍感じゃないし、バカじゃない。



「中野さん、怪我したんだよ。

ぱっくりと肉が裂けるのが見えたのよ。

それが真っ赤な血で被われて。

腕から滴る血が床をどんどん黒くして。

それなのにお店の人は中野さんを邪険におもてに放り出して。

だから・・・」



「そんなの、わかってる!」


オレは手にした煙草を叩きつけて大声を出していた。


「だけど、面白くねんだよ。

オレは中野のおっさんなんてどうでもいい。

よその客なんかどうでもいいんだよ。

どうなったってかまいやしない。

おっさんだって酔って暴れれば怪我することがあるかもしれないって、わかってんだろ。

怪我のひとつやふたつ自業自得だろ。

だからお前が心配してやることなんかないんだ。

わかるか?

ただの客にいちいち気安く関わったりするな。

オレに疑われるようなことするな。

オレに嘘をつくな!」



プライドという壁でせき止められていた嫉妬心が鬱屈とともに溢れ出した。

これが本音だ。

周りがどうなろうと知ったことじゃない。

ただオレだけを見てほしい。


それきりリナが口をつぐんでしまったので、それ以上、大きな喧嘩にはならなかった。




それからは、会うたびに最悪の展開になった。

オレは中野のおっさんのことが気になってしょうがなくて、会うたびに根掘り葉掘り聴いた。

リナはうんざりしているだろうに、そのたびにあのときと同じ恐いくらい真面目な顔で

「中野さんとは何もない。ただのお客さんだから」

と繰り返した。

そして最後にはいつも「別れ話」になった。

リナが「ごめんなさい」と浮気を認めてくれたほうがどんなに楽だったか。

それはリナも分かっていたはずだ。

でもリナは、そうはしなかった。




「みんな、一度「別れ」を口にすると、次からは簡単に「別れ」という言葉が口をつくようにナリマス」


リナが日本語で声を震わせて言ったことがあった。

なぜ日本語で言ったのかは分からない。

でもその感覚は中国人も一緒なんだ、と妙に納得した。

確かに、一度「別れ」を口にした恋人同士は、何かあって喧嘩するとすぐに「別れ」を口にするようになる。

きっとアメリカ人もインド人もフランス人も、人間はみんな同じ感覚なんだろうな、と思った。




リナに聴かれたことがある。


「どうして?、どうして中野さんがあの夜、怪我をしたって知っていたの?

どうして中野さんと谷口さんが同じ会社の同僚だって分かったの?

どうして?」



オレは白を切れなくなって、谷口のおっさんのブログのことを話した。

その話はレイカにも伝わり、おっさんのブログは閉鎖してしまった。

レイカとおっさんの二人で撮った写真がブログにたくさんアップされていたことにレイカが激怒したのだ。

ブログの最後の記事には、「レイカの知り合いさん、よくこのブログを見つけることができましたね、御見それしました」と書いてあった。

悪いことをしたなと思う。




もう長いことリナに会っていない。




「お前が浮気してたら死ぬからな!」

最後に会ったときに言った言葉だ。

自分でも笑ってしまう。

脅しにもなっていない。

相当テンパッてたんだなと思う。

でもそれからリナはオレに連絡を取らなくなった。

やっぱりリナは浮気してたんだろうかと思った。




それからオレは機械のように働いた。

機械に成り下がってしまったオレの心臓は、いつもギリギリと、ぜいぜいと、オレを生かしておくためだけに動くただの歯車になってしまった。

停めてもいいですか?

もう動かなくていいですか?

いつもそんなふうに問いかけながら不承不承動いていた。

夜、ベッドでうつぶせになると、そんな心臓の不満そうな軋みが聞こえオレを促した。

もう停めてしまいましょうよ、あっさりと。

生きているのが面倒くさかった。

だけど死ぬのはもっと面倒くさかった。

何もかもが急につまらなくなった。





だからオレは日本人カラオケに行っては毎晩のようにホテルにオンナを連れ込んだ。

妻以外とホテルに泊まるのは中国では犯罪だ。

捕まるとパスポートに「恥」とスタンプで押され一生中国には入国できなくなる。

でももうそんなことはどうでもいいと思っていた。



昨日、久しぶりにリナからメールがきた。

明日、夜、ホテルに会いに来ると。

びっくりした。

あさってはオレが日本に帰る日だった。




突然、リナと会ったころのことを思い出した。

オレがまだ中国語をよく喋れないころ。

リナのアパートに泊まった朝。

そのころ覚えた中国語が「洗濯」「下着」「~だけ」「手伝う」だった。

それをつなげて言ったら

「下着だけ洗ってあげる」

になった。

リナが日本語で言った。

「あなたヘンタイ」

二人で笑い転げた。

あのとき世界が輝き始めた。




泣きたくなった。











TO BE CONTINUE・・・・・・





次回は本当に最終回です






2006/10/17 (Tue) 泳げない魚たち8:予感
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酔ってまーーーーす!!!!!



でさ、言っとくけどさ

最終回じゃねえのよ、これ。

なにもったいつけてんの、って?

まあまあまあまあ

どうどうどうどう


8回ってさ、きり悪いじゃん???

そんなことない?



そんなこんなで、今日は短め

ひうぃご!!!!












血で黒く固まった包帯をリナの顔に投げつけた。

包帯に包まれていたコンドームが空中で抜け出し、リナの肩に当たって床に落ちた。

顔に命中して落ちた黒い包帯はコロコロと転がって、コンドームと床の上で並んだ。

間抜けだ。

中野のおっさんの血と精液。

どんどんパズルが組みあがっていく。

激しく力が抜けた。

涙が出るのを通り越してオレは陽気にすらなった。


「中野のおっさん、あの日

酔ってオレに電話してきた日、ここに来たよな?」



「・・・・・・違う」


「違わない。

おっさん、あの日、酔ってオレに電話してきたあとに暴れて店をつまみ出された。

暴れたときに割れたグラスかなんかで腕を怪我して、それをお前が介抱した。

そしてそのまま二人でここに来て朝まで一緒だったんだろ。

だから次の日オレがおっさんに電話していろいろ聞いたぞ、ってカマかけても、それは絶対嘘だって言い切れたんじゃないのか。

そうなんだろ」



「・・・違う。・・・そんなんじゃない」


「じゃ、どんなんだよ」


「確かにあなたの言う通り、あの日は店の前で中野さんの傷の手当をしてここに来たわ。

朝まで一緒にいた。

でもね、へんなことは一切してない。

いくら言い寄られても中野さんとしたことは今まで一度だってない」


「じゃあこれってなんだよ」

コンドームに視線を向けて顎をしゃくる。

「レイカがゴミを片付けるときに・・・多分、そう。

レイカが谷口さんと会ったときに、ゴミ箱に入っていた包帯でこれを包んだんだと」


リナの言葉を遮る。

「もうお前らを信用できるか!

レイカもお前もこの前オレを騙しただろうが!

だいたいここまで証拠が揃ってるのに、なにもしてないなんて、よくそんなことが言えるよな、信じらんねえよ!

舐めるのもいい加減にしろ!」



もううんざりだ。

風景がどんどん薄っぺらになって、つるつるになっていく。



思い出したのは世界がネガフィルムのように反転したあの日だ。

なんでイジメられたのかは今になってもよくわからない。

ゲームのように誰かが言い出して、たまたまオレがターゲットになったのだろう。

子供の世界なんてオトナが考えるよりはるかに単純で、だからこそ、その単純な無邪気さが残酷だ。

その日から突然、みんなが口をきいてくれなくなり、靴を捨てられたり、机にいたずら書きをされたり、ゲタ箱にゴミを入れられたりしはじめた。

給食の時間もグループごとに机をよせてはいたけれど、誰も話してくれなかった。

やがて朝になると腹が痛くなり、下痢ばかりおこすようになった。

毎日、学校を燃やすこと、地球をぶっ壊すこと、そればかりを考えていた。

今もあのときと同じだ。

怒りの波が押し寄せてきて身体の輪郭が曖昧になる。

この星をぶっ壊したいという怒りが脳髄を突き抜ける。




「あたしはあなたに信じてもらえないとしても・・・

信じてと、

なにもないからと、

本当だからと、

言うことしかできない。

ほかには何もできない。

だけど・・・お願い、あたしを信じてほしい」



こわいほど真剣な目。

涙が溢れて、頬をつたう。

でもやっぱりどこか嘘をついているように見える。

こめかみのあたりがチリチリした。

気に入らない、と思った。

リナはオレの喉をかき切っておいて、傷は浅いから信じて、と言う。

オレの息を停めておいて、なにもないから一緒に歩こう、と言う。

終ってることを終らせない。

その理不尽さはつらすぎる。



リナを睨みつける。

頬をつたう涙はテラテラと光っている。

光る涙に風景が写りこむ。

写りこんだ風景が一滴の水の中で泳ぐ魚のようにも見える。

オレはずっと我慢してた。

もう一ミクロンも我慢できない。

もう歩けない。

もう走れない。

もう泳げない。



明日、明日、明日。

明日のことをいつも考えて、結局どこへも行けない。

オレたちは気がつけば同じ場所でコマネズミのように滑車を回してるだけだ。

子供のころは人生は永遠に続いていくと思っていた。

自分の可能性に限界があるなんて思っていなかった。

だから目の前のことに後先かまわず没頭できた。

でも今は明日のことや三日後のことや来週の予定をすぐ考える。

そして最近は五年後のことや十年後のことまで頭にちらつく。

このまま中国で働いていて病気になったらどうするのか。

やっぱりリナと結婚して中国で暮らしたほうが幸せなのか。

そのためにはどれくらい貯金が必要なのか。

保険は入っておくべきか。

そんなことばかりを考えていた。

それももうおしまいだ。

よくあること。

みんなこうやって些細な落胆を積み重ねてつまんないオトナになっていくのか。



自分の夢が叶うとは思えない。

だから人の夢も笑う。

そんなオトナにはなりたくないと思って生きてきた。

でも結局は同じ場所に落ち着こうとしているんじゃないか。

オレは本当はどこへ行きたかったんだろう。



急に、尖っていた意識のひだをオブラートでくるまれたみたいにいろんなことが億劫になった。

急に気分が萎えた。

リナの中でオレが一番大きいのはオレだって分かってる。

だけどオレが全てではないのかもしれないという不安がいつもある。

リナの中でオレが一番大きいだけでは満足できない。

オレがリナの全てでなければ納得がいかない。

不安。

嫉妬。

それだけオレはリナのことが好きだということかもしれない。








「別れようか」















つうびーConちぬう・・・・








はい、今日はここまで♪

文章グデグデ?

酔っ払いなんで許せ

んじゃもう寝るわ

ぐない☆




2006/10/14 (Sat) 泳げない魚たち7:嘘
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今日、新潟から帰ってきました。

妙高に行ってたんですが山の上は雪が積もってましたよ。

さ、久々に

うりゃあぁぁああ・・・・ あああぁ・・・いったれや!!!







リナのマンションからレイカのいるアパートまで歩く。

生暖かい夏の空気がわずらわしい。

今夜もスモッグで星はまばらだ。

リナは通り過ぎる車に向かって日本語で「ばーか、ばーか」と言っている。

「アメリカの映画とかで、こういうのあったよね」

「ロードムービー?」

「そういうんじゃなくって

なんかバイクとかで荷物積んで走ってる感じのヤツ」


だから、それがロードムービーだろ。

「あたし、ああいうのけっこう憧れていたんだよね」

「へえ、けっこうロマンチストなんだ」

時間は午前二時を過ぎていた。

もちろん遅いからといって引き返す気はさらさらなかった。

明日にしようなどとは夢にも思わない。

リナは何かを隠している。

嘘をついている。

とにかく今は、レイカにマンションのことを聴いて確かめなければ気が済まなかった。

とにかく今夜は。





人は自分が本当に望んでいることを知らない。

自分の本当の望みを、本当の心の声を聴くのが一番難しい。

それは自分が自覚している望みの正反対のことだったりもする。

おれは何を望んでいるのだろう。

リナが浮気していることを望んでいるわけがない。

いや、本当のオレは、詮索し続けるのが面倒くさくて、あれこれ考え続けるのが辛くて、いっそ終らせようとしているのか。

「リナ」

「なに?」

言いたいことがある気がしたが、なにを言えばいいのかわからなくなった。

アパートの階段をあがる。

「ねえ、もうこんな時間なんだね。泊まっていく?」

リナはこれから嘘が暴かれるかもしれないのに何故かとても自然だ。

「うん・・・どうしようかな。明日も朝早いんだ」

「そうなんだ」

「それより腹へったよ」

リナが鍵を開ける。

「ねえ、何か食うもんない?」

オレはアパートに入るなりキッチンに入っていった。

「好きに探して何でも食べれば」

リナはソファーに倒れこんだ。

オレが冷蔵庫を物色しているとレイカが部屋からゴソゴソと出てきた。

「こんばんは、イズさん。愛玲、あたしも、おなかすいちゃったわ」

リナとレイカは武漢の幼馴染だ。

だから当然のこと名前で呼びあう。

リナの本名は李愛玲、リーアイリン。

レイカは柳麗華、ユーレイファ、だ。

以前は、リナの本名を知っているのはオレだけだと他の客に対して優越感があったりもした。

今となってはそれもどうだか怪しい。

中野のおっさんも知っているのだろうか。

オレは冷蔵庫やら棚の扉を片っ端から開ける。

戸棚の中にカップ麺と食パンを見つけた。

いつの間にか隣にきていたレイカが、見つかっちゃった、とかなんとか楽しそうに騒いでいる。

二人でお湯を沸かす。

トースターにセットする。

レイカと一緒にケタケタ笑う。

レイカは華奢で、笑うと小西真奈美によく似ている。

リナはぼんやりと顔だけこっちに向けている。

「愛玲、コーヒー飲む?」

「うん」

「じゃあ、入れてあげる」

リナはようやくソファーから起き上がった。

テーブルを三人で囲んで、顔を合わせた。

レイカはカップ麺を食べながら満足そうだ。

「今日、晩ごはん、まともなもの食ってなかったのよ」

「こんな時間に食べると太るわよ」

「おっと」

おどけながらレイカはオレたちに顔を向けた。

「それで何してたのよ、こんなに遅く」

待てば海路のなんたらだ。

たいして待ってもないけど。

どう切り出そうかと考えていたところ

図らずもレイカから切り出してくれた。



オレはドキドキしながらも茶化すように聴く。

「うん、さっき、あっちのマンションに行った。

すごいねあの派手なマンション。

知ってる?」


「ああ、ふーん、そうなんだ」

そんだけ?

思わず、コーヒーが気管に入りむせそうになった。

椅子の上で体育座りしているリナがオレを見ている。

オレはきっとビックリしたウサギみたいな顔をしているに違いない。

あまりにレイカがあっさり認めたのが予想外だった。

オレはいつも最悪のことを想定しているタイプの人間だから。


「え?知ってる?」

「そりゃもちろん、知ってるわよ」

レイカは何食わぬ様子でテーブルに肘をついて煙草に火をつけた。

マンションにあった吸殻と同じ銘柄の煙草だ。

「行ったことあるの?」

「当たり前じゃない。何度も行ってるわよ。ていうか・・・」

「ていうか?」

「ああ、うん、まあ、そういうこと。

おとといもあっちに行ったもの」


「へえ・・・そうなんだ・・・」

レイカの吸っている煙草を見つめる。

マンションの吸殻のことは、もう聴く気がうせた。

あれはきっと本当にレイカの吸殻なんだろう。


でもなにかが釈然としない。

二人で口裏を合わせている可能性だってある。

だが少なくとも、マンションからここに向かう間に、リナはレイカに連絡を取っていない。

ずっとオレが一緒だったからそれは不可能だ。

だとしたら、いつかこうなることを予測して二人で口裏を合わせていたということはないだろうか。

いやいや、そこまでやらないだろ。

疑い始めたらきりがない。

それとも本当に本当になんともないのか。

オレの取り越し苦労で、単にリナがマンションに引っ越しただけのことなのか。



レイカが噴き出した。

「なに、どうしたの?なんかあったの」

「・・・いや、べつになんにも」

リナが非難の目をオレに向ける。

「麗華、イズったら疑っているのよ。

中野さんのこと。

浮気しているんじゃないかって。ひどくない?」


レイカが思わず声を高めた。

「中野さん!?

プレゼント攻撃のあの中野さん?

どん臭そうなあの中野さん?

お金以外なんの取り柄もなさそうなあのスケベおやじの中野さん?」


「そうなのよ」

中野さんたら、ひどい言われようだ。

そうか、中野さんはお金以外なんの取り柄もないスケベおやじのコンコンチキなのか。

でっぷりと脂ぎったハゲおやじが頭に浮かんだ。

勝手な妄想。


「あれ?でも愛玲、中野さんとアフターしたことあるんだよね?」

「一度だけね。でも食事だけ、本当よ。

たくさんプレゼントも貰ったからね、営業活動よ。

でもそれだけ」


「イヤイヤ?」

「うーん、イヤイヤっていうか、あたしを気に入ってくれてるのは嬉しいけど、でも中野さんはただのお客さんだし・・・ありえないわ。

イズは何度そう言っても信じないみたいけど・・・」


ぐるりと首を回しうんざり顔でリナがオレを見る。

ありえないのか。

全てオレの幻想が生んだ取り越し苦労か。

でもやっぱり釈然としない。

鵜呑みにするな、と頭の片隅で叫ぶヤツがいる。

あの日の中野のおっさんの言葉、釈ちゃんはオレの女だ。

ただのお客が、携帯をパクった上、リダイヤルまでして「釈ちゃんはオレの女だ」とは言わない・・・と思う。

さもオレのほうが浮気相手だと決め付けていた怒り。嫉妬心。

あの熱は、なんでもないお客が持つエネルギーではない。


「じゃあ、なんで新しいマンションを隠してたのよ?」

そうだ、それならなんで隠す必要があるのか。

二人はにんまり微笑んで

「ナイショ」「ナイショ」

と声を合わせて椅子を立つ。

この話はここまでよ、という空気が流れる。

以前ならここで、適当に分かったふりをして大人ぶっていたかもしれない。

はっきりと追求できない自分の弱さを、これがやさしさだと誤解していたかもしれない。

だが今は「ナイショ」などといわれてスルーなんかできない。

「ナイショってなにさ。

あれって引っ越したばっかりじゃないよねえ。

なんで嘘つくんだよ」


二人が呆れ顔でオレを見ている。

まるで物分りの悪い子供を見る目だ。

オレも物分りの悪いガキは嫌いだ。

だけど、物分りのよすぎるガキはもっと嫌いだ。

「本当は、ばれなきゃ、マンションはずっと隠しておくつもりだったんだろ?

最近引っ越したようにはとても見えねえし。

なんで嘘つくんだよ。

オレが今回こっちに来る前から住んでいたんじゃねえのか?

それはリナがあのマンションを中野のおっさんから」


レイカがそれをさえぎった。

「はいはい、わかった、わかった」

レイカが諦めたように手をヒラヒラさせた。

「あたしのことで愛玲が勘違いされるのもイヤだからさ。

じゃあ、マンションのこと教えてあげる。

いいよね愛玲」


「べつに麗華がいいなら・・・」

と言うとそのままリナは部屋に消えていった。

あとは勝手に聞けば、ということか。



レイカは椅子を引いてもう一度テーブルに腰掛けた。

「言っておくけど、あのマンションはね一ヶ月前、イズさんがこっちにくるちょっと前かな、あたしがオトコにもらったものなの。

愛玲じゃないの。

実はあたしね、今囲ってもらってるオトコがいるのよ。

イズさんがこっちに来るちょっと前にそういう関係になったんだけどね。

谷口さんは、あたしが愛玲と一緒に住んでるの知ってたから、ほかに二人で気兼ねなく会える部屋が欲しいねって、あのマンションをくれたの。

でもさ、あたしイズさんには若い男紹介してって、いつも言ってたじゃない?

だからもしイズさんの知り合い紹介してもらえるんなら谷口さんを適当なとこで切ってもいいかな、って、そのくらいの気持ちだったの。

あ、オトコの名前、谷口さんていうのね。

だからあたしはね、囲ってもらってるオトコがいるってのをできればイズさんに知られたくなかった。

イズさんに若い知り合いを紹介してもらったら乗り換えようとマジで思っていたからね。

まあ今でもそう思っているんだけど。

うん。

絶対谷口さんとは面倒くさいことにはならないようにするからさ、ね、いい人いたら紹介して。

・・・まあそれはいっか。

でね、そうなったらそうなったでまた愛玲とあっちのマンションで一緒に住むつもりだったし

・・・ということで、あのマンションはそういうことなの

・・・わかった?」


もう少しのところで、レイカが囲われてたのは知ってたよ、と言いそうになった。

レイカがオトコに囲われてるのは例のブログで承知済だ。

そうか、あのブログの作者がこのマンションを買ったのか。

ふーん、谷口っていう名前なんだ。

カネ持ってんなあ。

多分、レイカは嘘を言っていない。


「だいたいおかしいと思わない?

引越しとか言って、こっちのアパートの荷物が何一つ減ってないでしょう」


「うん、おかしいと思ってた。

だから余計マンションのこと隠そうとしてるんじゃないかって思った」


「はは、そっか、そうだよね」

「じゃあ、あっちのマンションのインテリアとかは全部新しく買ったってこと?」

「うん、そう。

あーーでもちょっと違うかな。

えとね、愛玲は愛玲でさっきの中野さんからプレゼント攻撃で、何がいい?何が欲しい?っていつも聴かれていたのね。

だから、じゃあ新しい部屋のカーテンや家具なんかのインテリアを買ってもらっちゃえばってことになって、中野さんのプレゼントでマンションのインテリアを全部そろえちゃったのよ。

あたしがマンションを買って貰って、愛玲がインテリアを買って貰う。

そのうち一緒に住むんだからフィフティフィフティってことよね、持ちつ持たれつ。

まあ、だからこっちのアパートの荷物は何一つ減ってないってわけ。

そういうこと。

だからイズさんがさっき言ったように、ばれなきゃマンションはずっと隠しておくつもりだったし、イズさんがこっちに来るちょっと前からあのマンションには住んでいたわ。

住んでいたというより谷口さんと二人で会うときに使ってた、って感じだけど。

だけど、唯一イズさんが勘違いしてたのは、あのマンションは愛玲が中野さんから貰ったものじゃなくて、あたしが谷口さんから貰ったもの、ってこと。

どう?安心した?」



外が明るくなり始めてきていた。

リナはいつの間にかジャージに着替えてソファーに寝転んでいた。

ダサダサのジャージ姿のリナを見て、確かに少し安心した。

ギリギリまで本当のことを明かし、肝心なところはぼかされている気もするが、タイムオーバーだ。

冷めたコーヒーを飲み干し外に出た。

外に出ると陽射しはじんわりと暑さをふりしぼりはじめ、街のあちこちで蝉がジワジワ鳴きだしていた。










「中野さんはただのお客さんだから」

信じたいのは山々だが、まわりを見れば「日本人カラオケ」のキャストには信じ切れないものがある。

お店の中だけの擬似恋愛。

だがそれだけではお客もキャストも満足しない。

中国ではお店の中だけじゃなく店外でもたくさんのキャストが擬似恋愛をしている。

擬似恋愛という名の売春。

「スケベおやじの下心」と「ジャパンマネー」

要は「需要」と「供給」だ。

お店がはねてから一晩だけスケベおやじの相手をする。

キャストは一晩我慢するだけで、まともに働いているOLの一ヶ月分の給料を手にできるのだ。

貧しい中国でそんなおいしい話は他にない。

一方、スケベおやじにとっては、たった一万円でオンナが抱けるのだ。

日本では見向きもされないようなイイオンナと一万円で一晩やれる。

逆に日本でそんなおいしい話はありえない。

「需要」と「供給」。

円パワー。


だからといってオレは中国の女性を身持ちがユルい拝金主義者とは思わない。

考えてみれば日本人だって同じだろう。

五万円払えば女子高生がホイホイついてくるご時勢。

OLの一ヶ月分の給料を、例えば二十万円をあげれば一晩付き合うキャバクラのキャストは山ほどいるだろう。

中国ではそれが一万円だということ。

そういうことだ。











上海に来てから一ヶ月半が経った。

今日は仕事が休みなので昨日はリナのアパートに泊まった。

もう昼前くらいだろうか、陽の光りが窓から鋭角に降り注いでいる。

ベッドで目が醒めてリナを見ていたらリナも目を醒ました。

いつからそうなったのかわからないが、オレは左側が好きだ。

歩くときも、座るときも、寝るときも、いつも左側にポジションをとる。

何も利き腕を自由にさせるためじゃない。

もちろんそれも大切なことだけど、オレが右利きだったとしても、やっぱり左側がいい。

安心する。

右側に横たわるリナはオレの肩に頭を乗せて、手も足も巻きつけるようにしてくっついている。

生身の身体は温かい。

リナの身体はとてもしなやかで、密着した肌が心地いい。

「聞いてもいい?」

「うん」

リナがくぐもった声で答える。

遠くでサイレンが鳴っている。

「何でこうなるの?」

「こうって?」

「だから、つまり、いきなりしたい、なんてさ」

「イヤだった?」

「それはないけど、今まで全然そんなのなかったから。

びっくりしたよ」


「うん、なんでかなあ」

リナが笑う。

腹筋がやわらかく上下した。


「何かあった?」

「お店でちょっとね。ぐったりだわ」

「だったら辞めればいいさ」


「うん。そうするつもり」

「日本語学校を卒業したらリナの働くところくらいオレがなんとかするよ。お金だって」

「気にしないで」

「なんで」

「イズに紹介してもらったら、その職場、簡単に辞められないじゃない」

リナは笑ってそういうと再び目を閉じた。

オレはリナの手をはずしてベッドから抜け出した。

「天気いいしどっか行こうよ」

「うーん・・・そうだね」

リナは半分身体を起こし、シーツを胸まで引き上げた。

「そう言えば前にオレが買ってあげた服、オレンジのやつ。

あれ着たの見たことないなあ。

あれ着てよ」


「うん。いいよ。

あ、でもあの服、あっちのマンションにおいてあるんだ」


「え?え?なんで」

「ああ、まあ、いろいろと」

リナが言葉を濁す。

「なんだよ、それ」

「うん、お店であの服を着てて、それからあっちのマンションに行ったとき着替えて置いてきちゃったの」

オレは半分口をあけたまま、リナを眺めた。

店を辞めてほしいと思っているのに、買ってあげた服が店で働くことを応援するカタチになってしまっていることに違和感を覚えた。

オレがあげた服を着て、知らないオトコを接客してると思うと腹立たしかった。

「どうかした?」

「いや、別に」

「なんか気に障った?」

「よくわかんない」






それから服を取りにマンションに向かった。

部屋に着くと買ってあげたオレンジの服はきちんと壁にかかっていた。

先週来たときと部屋の様子は何も変わっていないように思えた。

ただ、ゴミ箱のゴミが片付けられていた。

「ねえ、着替えるからちょっと向こうにいってて」

ああ、とか適当に返事をしてキッチンのほうに行く。




吸っていた煙草を水道の水で消し、キッチンの大きいゴミ箱のフタを開けて投げ込む。

手持ち無沙汰に何気なくもう一度ゴミ箱をあけてみる。

お菓子の袋の上に捨てた煙草がのっかていた。

煙草の火はちゃんと消えている。

ゴミ箱の中には、ストッキング、ペットボトル、ティッシュ、雑誌、などなど。

その底に茶色の布きれのようなものが見えた。

血が固まって変色した色だ。

ナプキン?

ちゃんと包んで捨てろよ、まったく。

一緒に捨てられていた雑誌でそれをゴミ箱の奥へとつつく。

あれ?

・・・いや、違う。

・ ・・ナプキンじゃないな。

なんだこれ?

・・・・・

手にとってみた。

「!!!」

全身がカッと熱をおび、神経が焼き切れそうになった。

思考が痺れた。

「たいがい綺麗とずる賢いはセット売りだ」

これは誰の言葉だったろうか。


そうか、あのときリナが隠したかったものはこれか。

先週、初めてここに来たとき、五分だけ待って、と言ったのはそういうことだったのか。

なんだ、まるっきし思ってた通りじゃないか。

アホらしくて話にならない。

苦笑がもれた。

卑屈な自嘲。

オレはそれをゴミ箱から取り出すと、リナが着替えている部屋に入った。




「もうちょっと待ってね、もうすぐだから」

オレはリナの胸ぐらを掴みたい気持ちを抑える。

「なあ、お前、中野さんとやっぱなんかあるだろ?」

「いきなりどうしたの」

背中のファスナーを上げてリナは笑っている。

「レイカを囲ってる谷口さんと中野のおっさんが同じ会社の同僚だって知ってるよな」

「・・・・なにそれ?・・・・同僚かどうかは知らないけど。

よく二人で一緒にお店に来るわ」


振り返ったリナが、オレの手にしたものを見て固まった。

「そんなにカネがほしいか?

いくら貰ってるんだよ?」


リナが軽蔑に似た目をオレに向けた。

「中野のおっさん、ここに来たことあるよな」

だが目が合うとリナの視線はゆらゆらと躊躇して床に落ちた。

オレは続ける。

「てか、この部屋はレイカと谷口とかいうおっさんがやる部屋だって聞いたけど、

お前と中野のおっさんがやる部屋でもあるよな」



・・・・・・・・・・・長い沈黙。



「何とか言えよ」



「違う・・・・・」

顔をあげたリナの瞳から涙が溢れて、目尻から頬を伝った。

「本当に違う・・・・中野さんとはなんにもない」

「じゃあ、なんだよこれ」

「違う、信じて・・・・本当になんにもないから」

「おっさんが店で暴れて怪我した夜に介抱してここに来たんだろうが」

オレはリナの顔に血で黒く染まった包帯を思いっきり投げつけた。

包帯に包まれていたコンドームが肩に当たって落ちた。

自分がひどく残酷なことをしている気分になった。

だけど怒りは身体の芯を凍らせたまま溶けない。


「信じて、信じて、違うの、本当になにもないの」

リナは泣きじゃくった。

むせながらも、信じて、何もないの、を繰り返す。

頭の芯がぼうっと痺れてきた。



ここにいたくなかった。

どこにもいたくなかった。

暖かい部屋で眠りたいと思った。

遠くでサイレンが鳴っていた。





to be continue・・・・・・




久々なんで頑張っていつもより長めですわ。

次回あたりで最終回かなあ☆










2006/10/09 (Mon) 泳げない魚たち6:マンション
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「じゃ、おやすみ」

「うん、じゃあね、おやすみ」

リナは胸の前で小さく手を振った。

オレはタクシーを降りて、ホテルのエントランスからロビーに入る。

フロントでルームキーを受け取り、エレベーターホールでエレベータが下りてくるのを待つ。

何気なく外に目をやると、リナを乗せたタクシーの赤いテールランプが見えた。

「ん!?」

タクシーはリナのアパートとは反対の方角に走り出している。

このホテルは繁華街から少し離れた大通りに面している。

リナのアパートはホテルを出て左に真っ直ぐいったところだ。

歩いて十分、ダッシュで三分、車ならあっという間についてしまう距離のところにある。

確かに今、テールランプはリナのアパートとは反対の方角に消えていった。

耳の奥、鼓動が「ドクン」と大きく響いた。

地球がうまく回りはじめると、いつもこうだ。

これは神様のいやがらせか。








リナがあれからどうしたのかを確かめたくて次の日も待ち合わせをした。

忙しいといっても睡眠時間を削ればそのへんは何とでもなる。

忙しいからなかなか会えないとか言っておいて、おかしな話だ。

目の前でリナが楽しそうにシフォンケーキを分解している。

「何で?」

「たぶんあたしはウサギ科の女なんだと思う」

「はあ?」

「ウサギってひとりぼっちだと寂しくて死んでしまうんだって。あたしもイズがいつも一緒にいてくれないと死んじゃうのよ」

「あっそ、だったら死ねば」

「ひどーい」

リナはオレを「イズ」と呼ぶ。

名前が「泉」だからだが、発音が英語の「is」と同じで覚えやすかったらしい。


「それでさ、昨日、あれから真っ直ぐアパートに帰らなかっただろ」

会話の流れに紛れこませてサラリと言った。

「あ、え?なんで?・・・帰ったよ」

笑っているリナの目が一瞬泳いだ。

「タクシーでアパートと反対の方に行ったじゃんか。

あんな時間からどこ行ったのよ」


「・・・・・あ、うん・・・あのね・・・XXXX・・・・XXXX・・・・」

わざとオレのわからない中国語で間をつなぐ。逡巡している。何を言おうか。どこまで言おうか。どう言おうか。

「え?なに、どこ行ったって?」

だから考える時間を与えない。さっさと正直に言え。

リナのケーキを分解する手が止まった。

「・・・えとね、実はね・・・言ってなかったんだけど・・・アパートを引っ越したの」

「はあ?」

オレはグラスの水を一気に飲み干した。

「うん、だからね、今まで住んでたアパートを引っ越したのね。今度のアパートは今までのアパートとは反対側になったの。だから、こんどのアパートはそっちで、ホテルから見たら右のほうで、で、だから・・・うん・・・」

しどろもどろ。

「はあ?・・・・それっていつよ」

「えとね、つい最近なんだけど・・・」

とリナは曖昧に言葉を濁した。

カチンときた。

引越し?そんなこと聞いてない。

リナは嘘をついている。

オレは煙草に火をつけた。

「なんでオレに何にも言わねえの?

なんで何にも言わないで引っ越すわけ?

だいたい何で引っ越したことを隠しておくのよ?」


「違う、違う。隠しておくつもりなんかじゃないよ。

あなたが最近忙しそうで、自分のことでいっぱいいっぱいそうだったから・・・。

それにね、引っ越したばっかりでまだ部屋が片付いてないの。

部屋が片付いてから言おうと思っていたからさ。

部屋が片付いたらアパートに呼んでビックリさせようと思っていたからさ・・・

本当、そうなの・・・」


リナは胸元を押さえた。

リナはオレがあげたリングを、店でははめれないからと、ネックレスにして首から下げている。

このリングに誓って嘘は言っていない、信じて、とでも言いたいのか。

「部屋が片付いてようがどうだろうがそんなのは関係ない。

その前に引っ越すことを、なんでオレになんにも言わねえのって?

それに昨日オレと逢ったときになんで引っ越したこと一言も言わねえのよ?

気づかれなきゃずっと隠しておくつもりだったんじゃねえの?」


自分で言っておいて胸騒ぎがどんどん膨れ上がってきた。

「だからそれは、部屋が片付いてから、って・・・」

リナの笑いはどんどんぎこちなくひきつってくる。

「じゃあ、これから行くか」

「え?」

「引っ越したアパートに行くんだよ」

どこまで本当か確かめたい。今すぐ確かめたい。

「ああ、うん、でも部屋が片付いて・・」

「どうでもいいよ、そんなの」

尖った声に、リナは狼狽した。

さっきまでの和やかな空気が一変している。

「いや、でも・・・あの・・・」

リナは何か言おうとしたが、これ以上オレに何を言っても無駄だと判ったのか、結局、観念した。

「・・・・・・いいけど」







ドアの前でリナは言った。

「ちょっとここで待ってて、五分でいいから、ね」

五分間待ってる間に部屋に残ったオトコの残滓を押入れにでも放り込むつもりなのだろう。

日本人も中国人も一緒だなあ、と妙に納得しながら、ああ、とか、うん、とか曖昧に返事をした。

リナが鍵を解いてドアを開けた瞬間、一緒に部屋の中に滑り込んだ。

オレも、日本でやってることと、中国でやってることが、かわらない。

「ちょっと、待ってよ、待ってってば!」

リナが腕をつかんだ。

前にもこんなことがあったようなデジャヴ。無言で腕を振りほどいて奥へと進む。

あれからすぐケーキも残したまま店を出て、リナに案内させて到着したアパートは、日本でいうところのマンションだった。

真っ白な壁に高い天井、斬新なデザインの豪華なマンション。

真面目に働くことがバカバカしく思えてくるほど稼ぎまくっているIT社長が好みそうなマンションだ。

まあ、中国人にすれば日本人の誰もがヒルズ族のようなものだが。

オレは奥に進み、三十畳はあるだろうだだっ広いフローリングのワンルームを茫然と眺めていた。

引越し?大嘘だ。

いつのはなしだよ、それ?

テレビの上のほこり、ゴミ箱のティッシュ、洗濯物、水切りカゴの食器・・・

あちこちに生活感が溢れかえっている。

灰皿をベッドのサイドテーブルに見つけた。

そして吸殻。

リナは煙草を吸わない。






・・・何かがカチリと音をたてて繋がった。






一ヶ月前、オレが上海に着いた日。

ホテルに到着したことをリナに電話で告げた。

前の日の電話でオレが上海に着いたら二人で食事しようということになっていたからだ。

オレの電話を受けて、リナはこれからホテルに向かうと言って電話を切った。

オレはリナにすぐにでも会いたかった。

だからホテルの前の石段に腰掛け、リナが現れるであろう方角をずっと眺めていた。

だが、十分待っても二十分待ってもなかなかリナは現れなかった。

ただその間、何度も携帯に電話が掛かってきた。

「もうすぐ行くよ、今どこにいるの」

と、オレがどこにいるのかを、なぜかリナは何度も聴いた。

オレは、ホテルの前の石段で待っているよ、と何度も答えた。

リナのアパートはホテルから歩いて十分くらいなので、

「オレがアパートに迎えに行こうか」

というと

「ううん、大丈夫、すぐ出るから待ってて」

と言う。

結局、そのときはホテルの前で一時間待たされた。



今、わかった。

今、繋がった。




あの日オレがホテルに着いたとき、リナはこっちのマンションにいたんじゃないか?

だからあのとき、オレがどこで待っているのかをしつこく聴いたんじゃないのか?

そしてリナはオレがホテルの前で待っていることを知って、わざわざ、大きく迂回してもうひとつのレイカと住んでいるアパートの方角からホテルに現れたんじゃないだろうか?

だから一時間も遅れたんじゃないのか?

こっちのマンション、すなわちオレの知ってるリナのアパートと反対側から現れたのではオレが不審に思うから。

不審に思ったオレが、リナにお金を貸してくれなくなるかもしれないから・・・。

あの日、オレは四万元を用意していた。

日本円にして六十万円。

リナが「リージェンシー」のオーナーママになるために貸して欲しいとオレに頼んだカネだ。

オレはリナにキャストを辞めてほしかった。

オレは、リナと結婚してもいいかな、と本気で思っていた。

今でも思っている。

結婚の話は二人の間で何度も持ち上がっている。

ただリナは日本に住むつもりはこれっぽっちもなかった。

会社のみんなには、お前のカネ目当てだろ、やめとけよ、と言われた。

確かにそれはそうなんだろう、ということは自分でもわかっている。

それでも中国に骨をうずめる覚悟、と言うと大げさだが、それでもいいかなと思い始めていた。

キャストという仕事は誘惑が多い。

リナくらいのキャストになるといろんな日本人がカネをちらつかせて囲おうとする。

日本に帰ってきているときはそれが不安でいつも電話していたようなものだ。

会えない時間が愛を育てるのは郷ひろみの歌の中だけだ。

だからリナがオーナーママになるなんてオレにとってはとんでもないことだったが、電話で反対し続けてもラチがあかなかった。

それより顔をつき合わせて話したほうが早いと思い、一応カネは日本から用意していくと伝えていた。




あの日のことは、リナがホテルに遅れてきたのは、そんなオレの気を損ねないようにとの立ち回りだったんじゃないだろうか?



リナは、今回の出張にくる前からすでにこのマンションに住んでいた。

いや、このマンションとレイカとのアパート、二つの部屋に住んでいた。

オレといるときはレイカと同居しているアパートで寝泊りし、その裏、このマンションを与えたオトコとはここで逢瀬を重ねていたに違いない。

いつの間にか、オレが日本に帰ってるあいだにオトコに囲われていた。

電話をかけてきた中野のおっさん。

あのやろう。

心の芯にしこりとして残っていた疑心暗鬼がむくむくと眼を醒ます。

それはだんだん確信にかわっていく。

当然今までリナとはセックスしまくった。

だが、時にはSMを試したり、イメクラごっこをしてみたり、わき腹がつるような体位にトライしたりという日本人カップルなら誰でも普通にやっているスパイス的なセックスをリナは一切いやがった。

リナはフェラやクンニなどのオーラルをする日本人を「きちがい」呼ばわりしていた。

そして、そういった行為はずっとかたくなに拒んできていた。

付き合ってからずっと。

それが今回、来てみるとどうだ。

リナは積極的に口に含み懸命に舌を絡ませるようになった。

「初めてだから上手くできないけど・・・」

というリナの変化にスケベな日本人のひとりであるオレは内心喜んでいたが、喉の奥深くまで含んでのスムーズな動きはどう考えても初めてのそれではなかった。

動くたびに内腿に触れるサラサラした髪の感触までもが狙ったものであるかのように感じた。

頭の隅で不信感を抱きながらも、このまま爆ぜてしまうのではないかと自分を抑えるのに苦労した。





・・・・そうか、そういうことだったのか・・・・

なんとなく想像はできたがオレは目を背けていた。やっぱり他のオトコに教えられたのか。

ずっしりと重いクサビを胸に打ち込まれたようだ。







オレが灰皿の吸殻を睨んでいるのに気付いてリナが言った。

「それ、レイカの吸殻だからね、本当だよ」

確かに灰皿の中の煙草の銘柄はレイカが吸ってる煙草と同じものだ。



「これからはレイカとは別々に住むつもりか?」

自分の存在価値を疑ったことなんてなかったけど。

「ううん、また一緒に住むつもりよ」

リナにとって、自分だけは違う男と思っていたけど。

「なんでここにはレイカの荷物がないんだ?」

これ以上、詮索しないほうがいいのだろうか、とも思う。

そしたら案外上手くやっていけるのかもしれない。

リナにとってオレが一番ならいいじゃないか、オレがリナの全てじゃなくてもいいじゃないか、と。

「レイカが忙しくてまだ持ってきてないだけ。そのうち持ってくるわ」

だけど止まらない。

「ふうん・・・じゃあ前のアパートにはまだレイカはいるんだ」

レイカがこのマンションを知っているのか確かめたい。

「うん、そう」

レイカがこの部屋で煙草を吸ったのか確かめたい。

「じゃあ、これから行こうか」

どこかへ続くと思っていた二人のレールは結局どこへも続いていないのかもしれない。

「え・・・・・どこ?」

レールは当たり前の風景に飲み込まれていくだけかもしれない。

「レイカがいるあっちのアパートに」

それでもレールの終点を確かめたいと思った。





これは先々週中国から帰ってきた後輩の・・・以下同文・・・

こいつは日曜日からまた中国に行ってしまいました。

私も明日から新潟に出張です。

なんか今日は雑な文章になった気がしますが

そういうことなんで許してくださいね。


んじゃ、行ってきまーす☆







2006/10/06 (Fri) 泳げない魚たち5:ドライブ
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ついに五話目ですわ。

シェケナべいべ!

さ、どんじょ♪










「さてこれからどうする?」

「このまま帰って寝ちゃうのはもったいないよね?」

「じゃ、海でも行っちゃう?」

リナが猫みたいに目を輝かせ、オレは歓声を上げた。

リナを喜ばせようとオレは会社の車で「リージェンシー」の前までリナを迎えに来ていた。

浮気を疑った罪滅ぼしでもある。

全面的に信用したわけではないが、そういったポーズが必要なときもある。

そうして地球は回っていく・・・。



中国では車はステータスだ。

車を買うお金で家が建てられる。

みんなが車を買うか家を建てるかで悩んでいるほど車は超高級品なのだ。

リナはドライブが大好きだ。



そういうわけでオレたちは国道沿いのコンビニまで戻って、買出しをした。

さすがにキャンプ用品はなかったが、買い物カゴはあっという間にお菓子や飲み物やらでいっぱいになる。

明らかに二人で食べるにはすでに過剰だが、今の気分としては過剰なくらいがちょうどいい。

「ねえ、お酒はどうする?ビールだけじゃ物足りないし、紹興酒とか欲しいよね」

「鍋があれば、焚き火で海水沸かして紹興酒をお燗できるんじゃない」

「あ、ナーイス」

「夜食にカップ麺とかほしいけど、お湯がないしね」

「あるにはあるけどねえ・・・」

レジカウンターの端にお客用のお湯が入った湯沸しポットがある。

リナがそれを不穏な目つきで見つめた。

ゆっくりとオレに目を戻し、ニヤリとオレになにかを訴えかけてくる。

なにをしたいかはわかったが、さすがにそれってどうなのだろう。

オレの躊躇を見て、耳打ちする。

「店の商品ってわけでもないしさ、捕まったってシャレですむわよ。タビノハジハカキステ?」

タビノハジハカキステ、学校で習ったのだろう。

そこだけ日本語で言った。

でも意味が違うと思う。

「そういう問題か?

だいたい警察に捕まったら日本に帰されて会社クビになるよ。

お金払えば売ってくれるんじゃないか。

リナ、交渉してくれよ」


「ダメよ」

リナが恐い顔をして首を振る。

「どしてよ?」

「それじゃ、ツマンナイから」

真顔で言われて思わず吹き出してしまった。

確かになんでもお金で解決しようとするのはロマンがない。

日本人の悪い癖だ。

まあ、これくらいなら捕まったって警察沙汰にはならないだろう。

カップ麺の棚に隠れて二人顔を突き合わせて作戦を練る。

「どうよ?いける?お前の足にかかってるんだよ」

「ええ!あたし?」

「お前は車の運転ができないじゃないか。

すぐに発車できるようにエンジンかけてスタンバッているから、ダッシュで車に飛び乗れ。

自信をもって。ファイト!」


なにに自信を持てというのか。

もはや気分は銀行強盗犯だ。

店員は眠そうな中年男性が一人。

「でもさ、あたしヒールだから走れないよお」

「でもオレがやるとエンジンかけてる間に捕まっちゃうよ」

「湯沸しポットひとつ強奪できないなんて、あたしたち、ダメダメじゃん・・・

使い方合ってる?」


ダメダメじゃん、はオレが教えた日本語だのひとつだ。

だいたい合ってる。

せっかくの一大イベントがなにやら、なげやりにだらけはじめる気配を感じ、オレは一大決心をした。

「よし、わかった。オレがやる!車で待ってろ。

かならず強奪していくから」


グッと胸の前で拳を握り、毅然と顔を上げる。

つまらないことでもオレには一世一代の勝負だったりする。

こんな取るに足らない一歩があってもいい。


おっさんの電話があってからギクシャクしてる二人の関係が元に戻るなら、勝負しようじゃないか。

リナもなにかを察したようにクスッと笑って、オレの拳に自分の拳をコツンと当てた。


「あんば!!!」

いや、そこは「ガンバ!」と教えたはずだろ。




リナは無理を言ってオレを困らせるのが好きだ。

いや、本当はオレが喜ぶことを知っているんだ。




・・・そしておれは無事ミッションを完了した。


「で、どうだったの?」

「あのオジサン、なかに入っちゃったから楽勝だった」

「なにそれ、ぜんぜんツマンナイじゃん」

そう言うと思った。




それからオレたちは海岸に行って、たきぎ拾いを始めた。

砂浜にはその気になるとけっこう盛大に流木や板が転がっていて、あっという間にかなりの量になった。

車のガソリンを給油ポンプで吸いだして、たきぎにかける。

吸っていた煙草をポンと放り投げると爆発したみたいに炎上して黒い煙がもわもわ噴き上げた。

「うわ。びっくり・・・」

「すっごいね。ガソリンって」

リナの顔がオレンジ色になり、オレは不思議なデジャヴにとらわれる。

遥か昔にもこんなふうに二人で過ごしていたような切なさだ。

当たり前だがそれは一時的な高揚感からくる幻想だ。

でも、それでもオレは無性にうれしかった。

ビールを飲みながら、鍋に海水を沸かし紹興酒をお燗した。

リナがポツリと言った。

「ねえ、お金がたくさん欲しいって思うことはイケナイことなのかな」

オレは黙り込んだ。

薄っぺらな一般論を言えるほど厚顔ではない。

「あたしの店でもさ、売り上げを上げるために他のコの客と寝てまで横取りするコもいるし、そんなの汚いってコもいるけど、どうしてもお金が欲しくて、そのためにお客と寝るのが必要なら、そっちのほうが潔いってかんじもしちゃうし。

なんにもしないで妬んだり陰口言ってるコよりは、そういうコのほうが自分の人生を生きてるかんじがする・・・」


「リナはどっちよ?」



「ナイショ・・・・・」


「・・・・・・・・・・・」


「・・・うそ、そんなことしてないよ」



リナは微笑んで空を見上げた。

オレもつられて空を見上げた。

星なんてひとつも見えなかった。

「星、見えないじゃん。なに見上げてんだよ」

「あたしに言わないでよ」

「意味深に空なんて見上げるからオレまでつられただろ」

「なんとなく、そういう空気だったでしょ」

「まったく・・・格好つけて」



「じゃあさ、せっかくだから、夜食でも食う?」

リナが照れを隠すように立ち上がった。

「おーおー」

リナが強奪した湯沸しポットを抱えて戻ってきた。

カップラーメンを用意して、リナがポットの給湯ボタンをエイっと押す。

「あれ・・・・・お湯、出ないじゃん」

「だって電源ないもの」

オレたちは同時に吹き出した。

確かに電源がなければ給湯できない。

強引にフタを開けて直接お湯を注ごうとして、また笑った。

お湯が入っていなかったのだ。

「あたしたち、アホアホ?」

そう、オレたち、ダメダメのアホアホ。

オレたちは長い間、笑い転げた。




そのときは、いつもの二人に戻れた気がした。




それから急に仕事が忙しくなり、仕事に埋没した。

休日も接待ゴルフなどでリナに会えない日が続いた。

そんな中、オレはなんとか時間をつくり、リナのお店がはねてから久しぶりに二人で食事をした。

次の日も仕事で朝が早いので、タクシーで二人で帰りホテルで別れた。

「じゃあな、おやすみ」

「うん、じゃあね、おやすみ」

オレだけタクシーから降りる。

ホテルの前でタクシーはユーターンしてリナのアパートに行く。

リナのアパートはホテルから歩いても十分くらいの場所だ。

だがその日は様子が違った。

何気なく振り返ると、まだタクシーはそこにいた。

どうしたんだろう。

オレはホテルのロビーに入ってもう一度振り返る。

しばらくすると、オレがホテルに入ったのを見計らうように、タクシーはゆっくり発進した。

リナを乗せたままユーターンすることなく、いつもとは違う方向に向かって。

リナのアパートとは反対の方角に向かって。





先々週中国から帰ってきた後輩の実話です。

かれはまた急に今週の日曜日から中国出張決定!!

最終便しか飛行機がとれなくてあせってます☆



2006/10/05 (Thu) 泳げない魚たち4:カケヒキ
さてさて、またまた前回の続き。

うりゃりゃあ。




自動販売機にお金を入れて、コーラのボタンを押したら、取り出し口にはコーラが出てくる。

コンポタは出てこない。

コーラが出てくるという結果は自動販売機のボタンを押した瞬間に確信している。

当たり前のことだ。

オレは用意したセリフでゆっくりボタンを押し始める。

もうすぐ「おっさんとリナの関係」が取り出し口に出てくるはずだ。




「でさ、電話してるうちに、お互い知らない同士だけど同じ日本人じゃん?

お互いの仕事の話とか、近況報告みたなことになってきてさあ。

中野さんだっけ。

なんか話し込んじゃったよ。

そうそう、昨日、中野さんて店で暴れて怪我したんだってねえ。

割れたグラスで二の腕バッサー切ったって。

なんかそんなこと言ってたねえ」



オレがそう言うと、リナは向こうの窓の方を向いてしまった。

今日の朝チェックした例のブログには昨晩の「リージェンシー」の騒動が事細かに書いてあった。

それを見つけたオレはあまりのタイムリーさに身悶えた。

当然であるがオレは中野さんに電話なんかしていない。

中野さんが暴れたとか腕を怪我した、という情報の出何処は全て例のおっさんのブログだ。

そのブログには、「泥酔した同僚がカウンターの前でママと言い争いをし、「好きな四字熟語は釈由美子だ!」と叫んだあと店の中で暴れ始めた」と書いてあった。

「暴れた同僚はボトルやグラスをなぎ倒した上自分もそのまま倒れこんで割れたグラスで腕を怪我した」とのことだ。

その後、「同僚は恐いお兄さんに表につまみ出され路上に倒れこんでいたのだが、そこにリナが救急箱を持って現れ甲斐甲斐しく傷の手当てをし、気が付くといつの間にか二人はそこからいなくなっていた」、ということらしい。

そうブログには書いてあった。

それを読んでオレは確信した。

昨晩オレに電話をよこした中野さんは間違いなくおっさんのブログに登場している「同僚」だと。

プレゼント攻撃でリナとのアフター獲得に成功した「あいつ」だと。




「中野さんに怪我の手当てしてあげたんだって?釈ちゃんによろしくって言ってたよ」


窓の方を向いていたリナが怪訝そうな顔でチラッと目を向けた。


「どういう意味よ?」

「いや、ただ中野さんがそう言ってたから。別に意味なんかないよ」

リナがムッとした目を向けてくる。

「ねえ憶えてる?前にあたしに、特別な存在のお客さんはいないのか、って聴いたことあったよね。

あたし、そのときは“特別”の意味が解らなかったけど、あれからお店に来た日本人のお客さん何人かに、それってどんな意味なの、って聴いてみたの。

それでだいたいあなたが聴きたかったことは解ったわ。

誤解してるみたいだから言うけど、あたしには特別な存在のお客さんなんて、いない。

そんなお客さんは、いないよ。

疑ってるみたいだけど中野さんはなんでもない本当にただのお客さんなの」



突然言われて、なにを言っているのかわからなかった。

リナがそんな前のことを憶えていてちょっと驚いた。

記憶がよみがえった。

付き合い始めてすぐのころ確かにオレはリナに聴いたことがある。

そのときリナは、「“特別”の意味がワカラナイ」と困った顔をした。

そうか中国人には“特別な存在”というニュアンスが解らないのか、と妙に納得した。

他の言葉で聴きなおそうか、とも思ったが生々しいしいのでやめた。

そんなこともあった。

オレはワントーン声をあげる。


「そりゃ疑うだろーよ。

あのおっさん、昨日オレに電話してきたとき、釈ちゃんはオレの女だ!って言ったんだよ?普通、日本人のおっさんはただのお客ならキャバクラのキャストつかまえてそんなこと言わねえよ。

いくら酔ってたとしてもそんなことは絶対言わねえな。

なんかあるなって思うのが普通だろ?」


リナは首を振った。

「そんな、だいたい、そんな時間あるわけないじゃない!

いつも一緒にいるじゃない!

あなたが仕事してる昼間はあたしは毎日学校へ行っているわ。

学校が終って夜になればアルバイト。

店がはねれば二人で会ってるじゃない。

いつそんな時間があるっていうの!」


それは本当に嘘ではない。

「まあ、オレがこっちに来てるときはそうかもしれない。

でもな、オレが日本に帰っているときは、リナと確かにしょっちゅう電話はしてるけどな、それ以外のときはリナが何をしてるかなんて分からないだろうが。

そこにきて上海に来て早々、昨日のおっさんからの電話じゃ、オレがいない間におっさんとどうにかなってんじゃねえかって、当然、思うだろ」


リナはあきれたように大きく深くうなずきながら言う。

「でもそれはお互い様じゃないの?

あたしだってあなたの全ては分からない、あなたが日本にいるとき何をしてるかなんて全く分からない。

日本にもしあなたに彼女がいたってわからない。

要はそれと同じじゃないの?

信じるか、信じないか、じゃないの?

そんなもの証拠なんて見せようがない。

あたしがお客さんと一切なにもないって言ってることを、あなたが信じるか、信じないかじゃないの」



「じゃあ、なんでオレとはすぐに寝たんだよ」


少し声がかすれた。

「・・・・・・・・・・なによそれ?」


「オレとはすぐに寝て、他の客とは一切そういうことがないなんて、はいそうですかって信じれるわけねえだろ。

100パー説得力ねえよ。

なんでオレの誘いはすぐに乗ったんだよ?」


オレが誘っておいて、リナが誘いに乗ったことを責めている。

勝手で支離滅裂なのはわかってる。


「・・・・・ちょっと酔ってたから。

あのときはちょっと酔って、いい人かなって思ったから・・・・・」


「はあ?そんなもんか?

そんなもんなのか?

だとしたら、いいか、もう二度と酔うな!

酒は飲むな!」


ずるい。

卑怯。

なんとでも言え。

「それじゃ今の仕事できないじゃない!」

リナは毅然と挑むように睨み返してきた。

美しい獣のような顔。

「だから前から辞めろって言ってるだろ。

お前だって、日本語上手くなってこの世界からぬけだしたい、って言ってたじゃねーか。

あれはデマカセか?

やっぱりあれか、カネか?

カネが欲しいから辞められねえのか?

だったらオレが月々五万円渡してやるよ。

だったらいいだろ。

だからさっさと店を辞めろ」


オレはリナをやっぱりどこかで中国人だと思って見下している。

蔑んでいる。

馬鹿にしている。

パソコンも買ってあげた。

電話代も渡している。

一緒にいるときは見栄を張ってリナには一元だって払わせない。

それは、リナがお金欲しさに他の客と寝ないようにと、そうしていることだ。

お金のバリヤーを張っているようなもんだ。

要は浮気防止のためにお金を渡している。

カネを渡しておけば平気だろ。

なんて人を馬鹿にした傲慢な考え方なんだろう。

だけど止まらない。

「だいたいな、日本語上手くなってこの世界からぬけだしたい、

って言っといて、

店のオーナーママになれるかもしれないからお金貸してほしい、

ってなんなんだよ?ふざけんな!

そしたらこの世界にどっぷりじゃねーか。

本当にぬけだす気あんのか?

なんだかんだ言って、結局はカネじゃねーか。

働いてるところ見られるの嫌だから店に来ないで、ってなんなんだよ?

ってことはそういう関係になってる客がいるってことじゃねえのか?

さっき中野っておっさんと電話したときいろいろ聞いたんだよ。

おっさんが、山本さんも釈ちゃんと仲がいいんですか、って聞くから、まあボチボチ、テキトーに、って答えたら、そしたらおっさん、釈ちゃんカワイイですもんね、なんか他のキレイなだけのコと違ってオーラあるし、でもね、実は釈ちゃんて私の彼女なんです、この歳になってこんなこと言うのおかしいかもしれませんが山本さん変なちょっかい出さないでくださいね、だってよ。

中野っておっさんからたくさんプレゼント貰ったんだってな。

そんでアフターしたんだってな。

おっさん一緒に寝たことある、ってさっき電話で言ってたぞ。

昨日も怪我の手当てしてずっと一緒だったんだってなあ。

何してたんだか。

まったく、そんなんで、信じろ、とかよく言えるわな」


爆弾を投下し終わると頭の中がからっぽになった気がして、そのままぼんやりリナを見つめていた。

オレはなんでここにいて、なにをやってるんだろう・・・・

そんなことが急になにもかも解らなくなった。




リナの口から言葉が漏れた。

「・・・絶対そんなことない」

リナは泣き笑いのような顔をしている。

「・・・絶対そんなことないよ。

あなたは中野さんに電話なんかしていない。

絶対にしていない。

それに中野さんは本当にただの客さんよ。

昨日も怪我の手当てをしただけ」



「・・・・・・・・・・・・・」


シナリオにない展開。

オレが電話してないってなんでそこまで言い切れるのだろう。

ぼんやり考える。

釈然としない。

本当になんともないってことだろうか。

「おっさんとリナの関係」が取り出し口に出てくるはずだったのに何も出てきやしない。

コンポタさえ出てこない。

本当になにもないのだろうか。

中野のおっさんは本当にただのお客さんなのだろうか。

今日オレがおっさんに電話をしたかどうかの真偽をリナが確認できるはずない。

リナがさっきまでおっさんと一緒だったとすれば話は別だが・・・・

わからない。



リナが泣き笑いの顔で言った。

「あなたは、また、あたしを試している・・・」


ギリギリでまだどこかに繋がっていた見えない糸がぷつりと切れて、ゆらゆら漂っている気がした。

ガラスに映った自分の顔を見つめる。

ガラスに映った自分の顔はひどく子供っぽくて、卑屈で情けなかった。


「・・・ごめん」


咄嗟に漂ってる糸をたぐり寄せた。


リナは下を向いて急に深刻な眼をした。

その眼は自分が試されたことに激怒してるように見えた。

だが、必死に笑いを堪えているようにも見えた。




(とうべー こんちにゅー)



先週中国から帰ってきた後輩の実話です☆





2006/10/01 (Sun) 泳げない魚たち3:ブログ
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またまた前回の続きパート3

レッツラ、ドン!!






去年の年の瀬

オレは日本にいた。

クリスマスが終わり、惰性で冬休み突入を待っていた日。

会社のパソコンで遊び半分で

「上海、日本カラオケ、リージェンシー、リナ」

と検索をかけてみた。

そして偶然にそのブログを見つけた。

いや、自分で検索したのだから偶然ではなく、必然か。

日本人のおっさんのブログ。

検索しておいてこう言うのもなんだが

ビックリした。

ヒットしたことに。

身を乗り出して心に中で「ビンゴ!」と叫んでいた。

いや、咄嗟に「ビンゴ!」と本当に声に出していたかもしれない。

それほどこのブログを見つけたときはワクワクした。



その夜はメシも食わずまっすぐ家に帰った。

アパートにつくと暖房もつけずにすぐパソコンを開いた。

会社から自分宛に送ったメールを開き

メールで送ったブログのアドレスをクリックした。

そしてオレは、ブログの中に「リナ」という二文字を探しまくった。




そのころのオレとリナの関係は

中国にいれば当たり前のように週末をリナのアパートで過ごし

日本に帰ってきたときはIP電話でしょっちゅう連絡を取り合う仲になっていた。

すでに、会えばセックスするという仲は通り越した。

黙っていても気まずさがない。

鼻歌を歌ってあくびをするくらい気持ちがほぐれた関係だ。

会話はもっぱら中国語。

日常会話なら問題無いくらいまで上達していた。

オレが日本にいるときは週末によく長電話をした。

IP電話なら国際電話でも通話料金を気にせず長電話ができる

定額制。掛け放題。

「そんな高いもの買ってもらえない」

としぶる彼女に無理やりパソコンを買い与え

「通話料を考えたらこっちのほうが安いんだって」

と彼女を説得しIP電話を契約した。

中国でのケータイの通話料は掛けたほうは当然だが

電話を掛けられたほうもお金がかかる。

理不尽だが文句を言っても始まらない。

そういう決まりだ。

共産主義らしい思想。

はじめのうちはケータイで国際電話をしていた。

最初の通話料の請求を見てびっくりした。

彼女もそれと同じ金額を払っている、ということに罪悪感を覚えた。

彼女にお金を負担させるのは忍びないので、

出張のたびに電話代として三万円を彼女に渡していた。

それを考えたらパソコン代込みでも

IP電話のほうがはるかに安いということに気がついた。

IP電話ならカメラをつければ顔を見ながら話せる。

そこも気に入った。

それからは「じゃ、明日は十時にね」などと時間を決めて

しょっちゅう電話しあう関係。




そんな関係であっても

オレはリナのことを全面的に信用して

安心していられるほどのお人善しではない。

目が届かない遠い異国。

誘惑の多い仕事。

リナだってお金に貪欲な中国人である。

気が気でない。



だからこのブログを見つけたとき

自分の知らない第三者が書いたブログで

「リナにはオレ以外にオトコはいないんだ」

ってことを確認したかったのかもしれない。

確認して、安心したかったのかもしれない。

それと同時に正直なところ

リナがオレには見せない一面や、ほかの客とのエピソードが

ひょっとしたら垣間見れるのではないかと

ワクワクした気持ちもあった。

ワクワクする気持ち、意味深だ。




だが、見つけたブログを読みはじめて

すぐにワクワクはしぼんだ。

期待は大きくはずれた。

敬遠球かと思うクソボールくらいのはずれっぷりだ。

ワクワクがでかすぎた分、落胆も大きい。



おっさんのブログの中で「リナ」が出てきたのは

「レイカというコの仲良し」

として登場しただけだった。

レイカとリナが仲良しなのはオレだって知っている。

レイカと言えばあのレイカ以外にいない。

リナと一緒に住んでいるレイカ。

リナのアパートに行けばいつもレイカがいる。

三人で遊んだこともある。

リナとレイカは一年前に武漢でスカウトされ

二人で一緒に上海に出てきたおさななじみだ。

それとどうやらこのブログの作者のお気に入りは

レイカのほうらしい。



おっさんのブログの中にレイカの名前が出てきたことには少なからず驚いた。

オレの中国で数少ない知り合いの一人であるレイカに入れ込んでいる全く見たこともない日本人のおっさん。

そのおっさんのブログをオレが見ている。

このおっさんと上海ですれ違ったことがあるんじゃないか。

「リージェンシー」で同じときを過ごしたことがあるんじゃないか。

トイレで隣同士になって

「あ、どうも」

だなんてことだってあったのかもしれない。

世間は狭い。

おそろしく狭い。

果てしなく狭い。




去年の年の瀬の時点で、このブログを読んでわかったことは


1.このブログの作者は三菱商事の社員であり

  会社ではそこそこのポジションにいること。

2.新規ライン立ち上げの中国プロジェクトのメンバーであるが

  中国常駐ではないこと。

3.上海に行ったときは「リージェンシー」によく行くということ。

4.レイカに入れ込んでいるということ。

5・そのときは日本に帰ってきていたこと。



そのほかにも娘の結婚式が近いこと

祖母の様態が思わしくないこと

お歳暮がどうとか

そんなことはどうでもいい。



ブログの作者は日本と中国を行ったり来たりの出張組。

これはオレと同じだ。

そして上海の「リージェンシー」によく行く。

これも以下同文。

おっさんはレイカがお気に入り。

これはちょっと違うが。

そして年末は日本に帰ってきていた。

オレも日本にいた。

ブログの作者とオレはお互いまったくよく似た境遇にいた。

二人の違いは

「一流企業の部長さん」か「二流企業のペーペー」か

だけである。

立ち位置がちょっと違うだけ。

たいした違いじゃない。




そしてオレが今回、出張となったとき

同じ時期に、偶然にもこのブログの作者も上海に出張となったのだ。

そして日本にいたころは

三日に一回ペースで更新されてたこのブログは

今や、上海に来てからは

毎日更新されるようになった。

オレが上海に来てから今日で一週間が経った。

そしてブログはどんどん刺激的な内容になってきている。

おっさんは蝶を捕まえに

毎晩「リージェンシー」に繰り出し奮闘していた。




先週のブログには驚いた。

オレが上海に来た日の記事だ。

「レイカはベッドの中で、月々三万円でいいよ、

と言って身体を寄せた。嬉しかった」


と書いてあった。

要するにブログの作者はレイカを囲ったということだ。


「カレシがほしい。若いおとこ紹介してよ。

おじさんが好きなわけないじゃん」


と以前よく言っていたレイカが。

面食らった。



そしてその日のブログには

「そうそう、ついに「あいつ」もこっちに女ができた。

前から狙ってた釈ちゃんだ。

プレゼント攻撃でやっとアフターできたと思ったら

もう彼女呼ばわりしてやがる」


と書いてあった。

心臓がドクンと跳ねた。

頭の血が一瞬にして昇華した。

知らぬ間に息を詰めて、歯を食いしばっている。

おいおい、プレゼントって何あげた?

アフターって、何した?

それより「あいつ」って誰だ?

嫉妬した。

ばっかじゃねーの、どうせ勘違いおやじのたぐいだろ

アフターって言ったって営業活動の一環で外食くらいか

と思って落ち着こうとしたが上手くいかなかった。

頭がズキズキしはじめた。

うろたえた。






オレはこのブログを見つけたことを誰にも言っていない。

リナにもレイナにも。

会社の誰にも。

もちろんブログにコメントなどするはずもない。

ホシを泳がせる刑事のような気分で

電柱の影からこっそりこのブログを見張っている。

これからもずっとそのつもりだ。

だからプレゼント攻撃やアフターした「あいつ」のことも

リナには何も聞いていなかった。

聞くつもりもなかった。





だが、もう今は違う。

ある意味、夏の虫だ。

さっきの電話のおっさんだ。

さあこれでリナに聞くことができる。

心行くまで聞くことができる。

やっぱり電話のおっさんがブログに出てきた「あいつ」なのだろうか。

ケンシロウの言葉

「お前はすでに死んでいる」

つぶやいてみる。




さあ、なんて言ってリナを問い詰めようか。

どうやったら口を割るだろうか。

さっきは捨て台詞に

「オーケーオーケーじゃあそういうことにしておくか」

とは言ったが

そういうことにしておくつもりはない。




ホテルに帰る路地を歩いていた。

ひとけのない公園をショートカットした。

先週、事件があった公園。

この公園で三菱商事のサラリーマンが

青龍刀で切りつけられたらしい。

はっ、と思い、顔を上げてぐるりとあたりを見渡した。

生暖かい夏の空気。

相変わらず星もまばらな夜空だった。










「オレ今日さ、昨日電話かけてきたおっさんにこっちから電話してみたんだ」


「・・・・・・・・・」

リナの顔が急に雲って、萎えた顔になった。


「そしたら、おっさんさ、オレのことよく覚えてなくて。

昨日電話いただいた山本ですけど・・・って言ったらさ

どちらの山本様でしょう、って。

でちょっとちょっと説明したらなんとなく思い出したらしくて。

昨日は酔っててすみませんでした、って謝るんだよ。

本当に、どうも、どうも、って。

拍子抜けだよ。

どやしつけてやろうと思ってたのにさ」



出来るだけ明るく切り出した。

賭けだった。

オレがおっさんの電話番号なんか知るわけがない。

昨晩はリナのケータイから

リダイヤルでおっさんからかかってきたのだから。

「うそよ、なんで電話番号知ってるわけ、カマかけないでよ」

と見透かされるかと思った。

だけどリナはそうは言わなかった。

まあ、言ったとしても

「ああ、あの後、夜中にもう一度かかってきたんだ」

と言うだけだが。

もうシナリオはできている。

バッチグー。

今日の朝イチでチェックした例のブログがデカイ。

今朝のブログには昨晩の「リージェンシー」での出来事が

事細かに書いてあったのだから。

その場の当事者しか知らない情報がたくさん書いてあった。

さあ、卑怯なセリフのオンパレードだ。

秘密兵器が満載だ。


「でさ、電話してるうちにお互いの仕事の話とか

近況報告みたなことになってきてさあ。

中野さんだっけ。

なんか長電話しちゃったよ。

・・・そうそう、昨日あの後

中野さん店で暴れて怪我したんだってねえ。

割れたグラスで二の腕バッサー切ったって。

なんかそんなこと言ってたねえ」



オレは裸足で勝負するタチではない。

リナが向こうの窓の方を向いてしまった。






(まだまだ TO BE CONTINUE・・・・・・・)






先週中国から帰ってきた後輩の実話です。

長いのに最後まで読んでくれた人、ありがじゅう♪

いやあ、この話、3、4回で終らすつもりだったけどさ

こりゃ、どー見ても、あと3回くらいかかりそうだよー☆




【コメント 嬉しい♪楽しい♪大好き♪】

コメントするとタヒチ旅行が当たる!!!    かもよ・・・

【ばついち。だっけなんだや】

FineDays

Author:FineDays
プロフィール写真を変えてみた。
女豹のポーズの写真とどっちにしようか悩んだけどな。
思いきり背中そらせた上目使いのやつ。
でもやっぱ、まだ処女性をアピールしたい年頃じゃん?
「美尻伝説」打ち立てんのはまだ先でいいかなあって。
もうちょい清純派路線つらぬくわ。
でもなそうは言ってもな
アンアンの「SEXで綺麗になれる」特集とか見て来る日に備えてっから☆

【カウンター跳ね上がれ!マッハで♪】

【かてごり】

【激鬱を治癒する物語たち】

【リンク 行ってみれ】

あの娘のもとに                               飛びますっ!飛びますっ! 

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