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2007/01/15 (Mon) 泳げない魚たち:あれから1
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「もう、終わりですよ、終わり。おしまい。」

「そうなの?」

「今やり直したって絶対うまくいかないですって。

もう、うちらの仲は何回も割れた皿といっしょなんです。

接着剤とかで何回も無理やり補修した皿なんです。

ちょっとつついたらまたすぐ粉々に砕けるんです。

分かってるんです。

それにこの前、メールが着たんですけど「これからも友達で」みたいな
彼女もそんなかんじですから。

もう次の出張のときには、彼女にそっちに行くことは連絡しないし、しばらく会わないつもりですよ」






・・・・・・・などと先輩には言っておいて

中国に来て二週間でオレの決意は砕け散っていた。




ごうっとホコリっぽい排気を巻きあげて、すぐ脇をトラックがおい抜いていく。

街の明かりと喧騒がモヤのように絡み合った上海の空は

深夜でもうすぼんやりと発光していて、星はまるでみえなかった。

今回の出張でオレは狩猟民族たちの狩場に放り出されたように右往左往していた。

遠い異国でいつもどこかでビクビクしていて劣等感ばかりが募る。

いいじゃないか、と思ってしまったのは、酔っていたせいか、仕事が上手くいかず気持ちが弱っていたせいなのか。

多分、その両方だろう。

行っちゃえ・・・・

頭の奥深くから声が返ってきて、酔いが回った後頭部のあたりがじわっと熱をおびた。

その熱に乗り遅れないように声にだして呟いてみた。

「・・・・・行っちゃおうかな」

言ってしまってから、ヤバイな、と思った。

もやもやしていたものが、急に現実味をおびるのを感じた。

意を決したように手に持ってる缶ビールをゴクゴクと飲んだ。

ますますヤバイ。

種火に油をそそいでいる。

今行かなかったら、明日になったら、今の熱が冷めるのは目に見えている。

よくあること。

人生なんてそんなもの。

思いついたとき動き出せなきゃ、物語は始まらない。

どうしようかな・・・

先輩に口では「もう終わりだ」などと言いながら卑屈な願いがどこかにある。

我慢してたらダメでしょ?

意固地になってどうする?

しばらく缶の飲み口を睨みつけていた。

最後の一滴をすすったとき、オレの決意は砕けていた。

なにかに乗り遅れちゃいけない、と思った。

缶を持つ手にすこし力がこもる。

「おーし、いいじゃん、やっぱ行こう」

急に本気で胸がドキドキしてきて

なぜかあわてたように煙草に火をつけると

オレは「リージェンシー」に向かって歩き出していた。







リージェンシーに着いてみると店は閉店間際だった。

この時間になると、店の中はごった返した酔客で酸素が薄くなり、淀んだ喧騒が充満している。

免疫はできているが、それでも今日は居心地が悪い。

手持ち無沙汰で煙草を吸おうとしたが、なかなかライターに火がつかず

酸素が薄いからかな、などとバカなことを考えていたときに

目の前にタイトミニの脚があった。

見上げると、リナは、一瞬、芝居がかった仕草で驚きをうかべ、そのあとオレの心中を見透かしたように眼をふせ、微笑んだ。

リナのふせた眼と唇の端に、実は内心けっこう嬉しいような、喜んでいるような微笑が浮かんでいて、オレはひそかに安堵した。

「よっ!久しぶり」

「うん」

となりに座ったリナに悪戯っぽく見つめられ、視線が頬にチリチリする。

なんだか急に無性に鏡で自分の顔を確認したい衝動にかられた。

勝手に気持ちが先走って浮かれていた。

オレは自分が思っているより遥かに単純なオトコらしい。

「来てくれたんだ」

「ああ。なんとなく」

リナは

「ありがとう」

と言って、あどけない表情で笑った。

香水の匂いと化粧の匂い、そしてリナの特有の体臭のようなものが、ほのかに香った。

会わなくなって二ヶ月しか経ってないのに、懐かしさに胸が苦しくなる。


「どうだった」

「どうってなにが?」

「だから会わなくなってからの話」

リナは口ごもって、グラスを見つめ小さく笑った。

「あたしは、あんまり変わってないよ」

「イズは?」


急にふられて答えに詰まったが、正直に答えた。

「オレはしばらく会わないつもりだったんだけどなあ・・・・」

言うとルナは

「ええー!」

とおどけて声を上げた。

「じゃあなに、いつからこっちに来てるの?」

「二週間前かな」

「ありえない!それって絶対ヘン!」

そんな風に指をつきつけられても困る。

「だってオレら、別れたわけだし・・・・」

「あれ?そうだっけ?だけど、せめてあれでしょ?

ほら、なんだっけ?」


「もとカレ」

「そうそうそうそう!せめてそれでしょ。

もとカレとして会ってくれたっていいじゃない」


「そのへんは、ひとそれぞれだろ。

オレはそこまでオトナじゃねえから」


「何言ってるの、イズ?

三十三歳は大人も大人。

イズはもう十分、大人でしょ」


いや、オトナって、年齢とかそういう意味じゃないんだけど。

うんうん、とリナは深くうなずいている。

オレはリナに攻撃されたことがヘンにうれしくて、あえて意地になってみた。

「やっぱり、もう来るのよそうかなあ・・・帰ろっかなあ・・・・」

「ええー!」

とリナがまた声を上げる。

「あ。でももう閉店の時間だから。これから食事に行くことに決定しまーす!!」


オレがキョトンとすると、リナは顔を覗き込みニヤリとした。

そうはいくか。

「えーー。もうメシ食ってきたんだよ」

とお腹をさする。うそだ。

リナは一瞬、落胆したように素直に苦笑したと思ったら

「じゃあさ、じゃあさ。あたしのアパート行く?麗華もいるよ」

と小声でささやいた。

願ってもない提案だ。だけどホイホイとは乗ってやらない。

「オレこれからホテル帰ってやらなきゃいけない仕事残ってるんだけど」

どうよ。と睨みつけてやる。

これにはリナも

「うーん、残念」

と考えこんだ。

オレは吹き出してしまった。



胸の奥のこそばゆいような甘酸っぱい心地よさ。

ここ最近、こんなふうに無邪気に楽しい感覚はずっと忘れていた。

何が理由でオレたちは別れたんだっけ?

何がひっかかっていたんだっけ?





外に出ると夜空は、雲が風に流され、頭上にぽっかりときれいな月がでていた。

「さてさて。これからどうしよっか?」

これから、というのは意味深だ。今日のこれから?

「なんかあったかいもの飲みたい」

オレたちのこれから?

「はは。やっぱり。そう言うと思ったよ」

笑いが弾けた。







そして

何もなかったかのように地球は回りだす。

何もなかったかのようにくすんでいた世界が輝きだす。


何もなかったかのように・・・・

だけどそれは幻想に過ぎない。






これはオリジナルではなく、中国に行っている後輩の実話です。

秋に書いていた「泳げない魚たち」の続編です。(カテゴリ参照

後輩は10月にまた中国に行き、年末に日本に帰ってきています。

ちゃっかりヨリを戻していますが、やっぱいろいろあるようで・・・

今回も中途半端な終り方すること必至ですがww


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comment

このシリーズ、凄く素敵で吸い込まれるように読んじゃいますが
とても切なくなりますね~・・・。
でもまた読めるなんて!わくわく♪どきどき♪だわ!

兄貴の透明な表現力に魅了されますね☆
続き、お待ちしています(^^)
2007/01/15 03:03 | しおん [ 編集 ]

キターーーーーーーーーー!!!!!!!♪


兄さんグーですよ♪続きが読みたい!
なんか、前のときに引き戻されたみたい♪
つづき、楽しみにしてます☆
2007/01/15 04:03 | めみ [ 編集 ]

毎回毎回気になるんだよなー…。
早くも続きが…。

知らない人の話しなのにFineさんの文才にやられてます☆
すげーっす兄さん!!!
2007/01/15 07:56 | よっし [ 編集 ]

秋に書いてたやつですね
続きがはじまるんですか
一般的には1度別れると
女はサッパリ
男の方が引きづる事が多いような気がしますが
リナさんはどうなんでしょう

「目の前にタイトミニの脚があった。」
ココ☆やられたよー☆スキです☆
想像してしまったww
2007/01/15 21:28 | パフィーのTシャツ [ 編集 ]

リナ、リージェンシー・・・・

え?また検索しちゃったよーーー
うひーーー
もうこれ連載確実ね、ハイキマリ
締め切りには原稿貰いに行くわよ!


2007/01/15 23:17 | 梅子 [ 編集 ]

>しおんさん

ありがとうございます!
でも今回は短いですよ
途中経過報告みたいなものなんで
前回のは一年分の話でしたが今回は二ヶ月分なんでww
>透明な表現力←言いすぎですって、でもありがと
楽しんでもらえれば嬉しいです☆


>めみちゃん

はい。続きもうちょい書かせてもらいますよー。

今回は小説仕立てにしないで経過報告しようかな
とも思ったんですが。。。
結局、勢いでw
て言うか、練習がてら?小説仕立てにしてみた
あれから小説の書き方みたいの勉強したりしてますww
めざせ!印税生活!!!!


>よっしさん

ホント?気になります?
それは嬉しいですね♪

私は恋愛小説はあまり読まないんですが
まさか、自分がそんなの書くとは。。。
まあそんな気もなく実話を紹介している感覚なんでww


>パフィTさん

>一般的には1度別れると、女はサッパリ
>男の方が引きづる事が多いような気がしますが
確かに、女は上書き保存、男は名前をつけてフォルダ保存、などとよく言いますよね

「目の前にタイトミニの脚があった。」
そこに食いつくとこがやっぱ男ですね、パフィTさん♪


>うめっちさん

だから検索してもさ、仮名だから!!!
ちなみに「リージェンシー」は大学のころ行っていた六本木のディスコの名前ですがww

>締め切りには原稿貰いに行くわよ!
あ。それだと原稿料いただきますよwww
2007/01/16 00:20 | FineDays [ 編集 ]









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コメントするとタヒチ旅行が当たる!!!    かもよ・・・

【ばついち。だっけなんだや】

FineDays

Author:FineDays
プロフィール写真を変えてみた。
女豹のポーズの写真とどっちにしようか悩んだけどな。
思いきり背中そらせた上目使いのやつ。
でもやっぱ、まだ処女性をアピールしたい年頃じゃん?
「美尻伝説」打ち立てんのはまだ先でいいかなあって。
もうちょい清純派路線つらぬくわ。
でもなそうは言ってもな
アンアンの「SEXで綺麗になれる」特集とか見て来る日に備えてっから☆

【カウンター跳ね上がれ!マッハで♪】

【かてごり】

【激鬱を治癒する物語たち】

【リンク 行ってみれ】

あの娘のもとに                               飛びますっ!飛びますっ! 

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